研究課題/領域番号 |
18K15186
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中濱 泰祐 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10636187)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | RNA編集 / Adar1 / 自己免疫疾患 / T細胞成熟 |
研究実績の概要 |
2本鎖RNA中のアデノシンをイノシンへと置換するRNA編集はAdar1などによって触媒される。最近、このRNA編集が生じないと、内在RNAがセンサー分子MDA5によって非自己として認識されることが報告された。RNA編集は胸腺において豊富に生じているが、その意義は未解明である。このため、申請者はAdar1 floxマウスとCD4-Cre Tgマウスを交配し、T細胞特異的にAdar1を欠損させたマウスを作製した。その結果、本マウスが炎症性T細胞サブセットの異常集積を伴う大腸炎を自然発症することを見出した。本研究では、本マウスが大腸炎を発症するメカニズムを解析し、T細胞におけるRNA編集の生理的意義を解明することを目的とする。 平成30年度は、T細胞分化のどの段階で異常が生じているのかを明らかにするため、まず胸腺におけるT細胞成熟について解析を行った。その結果、Adar1を欠損すると、T細胞成熟に異常をきたし、自己反応性T細胞を排除する負の選択が正常に行われていないことが判明した。さらに、Adar1欠損胸腺細胞は、TCR刺激に対する応答性が著しく低下しており、これが負の選択からの回避につながっているものと考えられた。また、Adar1欠損胸腺細胞では、インターフェロン誘導遺伝子群の発現が上昇していたため、MDA5を2重で欠損させたところ、T細胞特異的Adar1欠損マウスで認められた異常の多くは正常化し、大腸炎も抑制されることが判明した。 今後は、Lck-cre Tgマウスとの交配により、より早い成熟段階でAdar1を欠損させることで生じる異常について解析をおこなっていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、Adar1 floxマウスとCD4-Cre Tgマウスを交配し、T細胞特異的にAdar1を欠損させたマウスを作製したところ、大腸炎を自然発症するとの予備データを得ていた。平成30年度は、本マウスが負の選択異常によって自己免疫症状を呈している可能性を示すことができた。さらに、Adar1欠損胸腺細胞では、インターフェロン誘導遺伝子群が高発現していること、MDA5を欠損させることにより多くの異常が正常化することを見出すこともできた。引き続き、胸腺におけるAdar1の機能解析を継続していく予定であるが、ここまでの研究成果を論文にまとめることもできたため、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
CD4-cre TgによるAdar1の欠失は胸腺におけるT細胞成熟の比較的後期で生じるため、初期段階でのRNA編集の生理的意義は不明のままである。このため、今後はさらに初期のT細胞成熟段階に的を絞って解析する予定である。すでに、Adar1 floxマウスとLck-Cre Tgマウスを交配し、T細胞成熟の初期段階でAdar1を欠損するマウスは樹立済みである。現在、本マウスを用いて、DN(CD4-CD8-)ステージにおけるAdar1の機能解析に取り組んでいる。
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