研究課題
2本鎖RNA中のアデノシンをイノシンへと置換するRNA編集はAdar1により触媒され、これには内在RNAがセンサー分子MDA5に非自己として認識されることを防ぐ機能がある。一方、RNA編集は特に胸腺において高頻度で生じるが、その生理的意義は不明である。申請者はこれまでに、CD4+T細胞特異的にAdar1を欠損させると、胸腺における負の選択異常が生じ、自己免疫症状が惹起されることを明らかにしてきた。2019年度には、T細胞成熟の初期段階からAdar1を欠損(ET-A1 cKO)させたマウスが、胸腺の著しい萎縮に加え、TCRの発現低下、アポトーシスの亢進、DN4ステージへの移行阻害などの異常を示すことを見出した。さらに、MDA5との2重欠損マウスを作製したところ、アポトーシスの亢進は抑えられたものの、DN4ステージへの移行は部分的であり、TCRの発現については全くレスキューされないことが明らかになった。このため、Adar1にはMDA5経路に依存しない機能が存在し、これがT細胞成熟の初期段階に必要であると考えられた。そこで昨年度はまずTCRの発現調節機構におけるAdar1の機能解析を行った。その結果、Adar1を欠損させると、out-of-frame型のTCRβ mRNA量が増加することが判明した。このため、ET-A1 cKOマウスをTCRトランスジェニックマウスと交配させたところ、DN4ステージへの移行は正常化するものの、一方でアポトーシスは亢進したままであった。そこでさらに、TCRトランスジェニック、MDA5 KOによる2重のレスキューマウスを樹立した。その結果、本マウスでは、Adar1欠損で生じる胸腺異常のほとんどが消失しており、T細胞成熟には、MDA5に依存、非依存的なAdar1の機能の両方が必要であることが明らかになった。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
PLoS Genet
巻: 未定(In Press) ページ: 未定(In Press)