研究課題
昨年度の研究結果から、T細胞およびB細胞においてp16INK4aを発現していることが示唆されたため、これらの細胞の若返りを行うことで、免疫グロブリンA(IgA)の機能と腸内フローラにどのような影響を及ぼすのかを検討した。そこで、若齢マウスと老齢マウスをパラビオーシスし、2 匹間で循環血液を共有させることで、老齢マウス内における免疫系の若返りを試みた。老齢マウスと結合した若齢マウスにおいては、パイエル板における p16INK4a の発現が上昇したのに対し、若齢マウスと結合した老齢マウスにおいては、逆に p16INK4a の発現が減少した。実際に、パラビオーシスした老齢マウスのパイエル板においては、IgA 産生に関わる濾胞性ヘルパーT 細胞や胚中心 B 細胞の半数以上が、若齢マウス由来の細胞に置き換わっており、免疫系、特にT細胞およびB細胞の若返りが行われていることが明らかとなった。興味深いことに、パラビオーシスを行い免疫系の若返りが行われた老齢マウスにおいては、IgA が結合している腸内細菌の割合が、若齢マウスと同程度まで減少し、腸内フローラの組成も若齢マウスの組成に近づいた。従って、パラビオーシスによりパイエル板における免疫細胞の一部若返りを行うことで、パイエル板の p16INK4a の発現が減少し、IgA の腸内細菌に対する結合性および腸内フローラが若齢マウスのものに近づくことが明らかとなった。以上の結果から、加齢に伴いT細胞もしくはB細胞においてp16INK4a発現が増加することにより、パイエル板のIgA産生機能に変化が生じ、腸内フローラの変化につながることが示唆された。
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Nat Commun
巻: 1935 ページ: -
10.1038/s41467-020-15719-6