研究課題/領域番号 |
18K15197
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
白川 公亮 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30626388)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オステオポンチン / 糖尿病 / 肥満 |
研究実績の概要 |
本研究課題では肥満に伴い内臓脂肪で免疫老化が加速するメカニズムの解明と免疫学的治療法の開発を目的とした。申請者はまず、マウスに与える食餌に注目した。通常の60%高脂肪食はパルミチン酸を中心とした飽和脂肪酸が多く含まれているため、飽和脂肪酸によるCD4 T細胞代謝や刺激に着目し、コントロールとしてオメガ9系脂肪酸であるオレイン酸を多く含む高脂肪食負荷と対比させた。4週齢から30週齢まで高脂肪食負荷したところ、オレイン酸負荷マウスではパルミチン酸負荷に比して体重は少ないが、内臓脂肪重量が有意に多いことが明らかになった。さらに、OGTTやITT検査による耐糖能異常やインスリン抵抗性もパルミチン酸負荷マウスに比して有意に低く、空腹時のインスリンやオステオポンチン血中濃度が有意に低下することが明らかになった。また、パルミチン酸負荷肥満マウスでは内臓脂肪に出現するPD1hiCD153+ CD4 T細胞の絶対数が有意に減少した。マクロファージの絶対数やCD11c陽性M1マクロファージの割合もオレイン酸負荷マウスではパルミチン酸負荷マウスに比して減少しており、それに付随して内臓脂肪のCrown-like structureの数も有意に少なかった。また、内臓脂肪ではSpp1、TnfaやIL-6などの炎症性遺伝子の発現が低下することが明らかになった。一方で、高脂肪食負荷CD153欠損マウスでは内臓脂肪のオステオポンチンの発現量をはじめ、耐糖能やインスリン抵抗性もレスキューされず、内臓脂肪の免疫老化の過程においてCD153は必須ではないと考えられた。以上より、内臓脂肪のCD4 T細胞老化の機序にパルミチン酸をはじめとした飽和脂肪酸の関与が示唆され、現在研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに内臓脂肪におけるCD4 T細胞の免疫老化の機序の一端を明らかにした。また、免疫老化を標的とした治療法の開発に関して、近年臨床的に着目されているSGLT2阻害薬であるトホグリフロジンが内臓脂肪の免疫細胞に与える影響を検討し、高脂肪食負荷肥満では、過剰な糖を摂取した際に起こる耐糖能異常と異なり、SGLT2の効果が乏しいことをPlos oneに報告している。免疫老化細胞を標的とした抗CD153抗体投与による耐糖能やインスリン抵抗性への影響を計画していたが、CD153欠損肥満マウスでは、まったく耐糖能やインスリン抵抗性がレスキューされなかったことから、再検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後、パルミチン酸負荷を病態の中心に、CD4 T細胞のオステオポンチン産生機序を解明していく。In vitroにおいても、T細胞刺激とともに各種脂肪酸を付加することによるサイトカインの産生量や増殖能、SAβgalなどの老化マーカーの検出を実施していく。 心疾患に対する肥満に伴うオステオポンチンの影響に関しては、オステオポンチンのGFPノックイン高脂肪食負荷肥満マウスに左前下行枝結紮による心筋梗塞を作成し、心エコーや病理学的な評価を実施していき病態の解明を行う。
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