研究課題
I. T細胞特異的Tet2/3欠損マウス(CD4DKO)におけるT細胞異常増殖分化メカニズムの解明CD4DKOマウスをTh17関連サイトカインシグナルを欠失したマウスと掛け合わせたところ、いずれもT細胞の異常増殖は抑制できなかったが、Il17-/-, Rorgt-/-, Il23-/-マウスとの掛け合わせによりTreg割合は回復し、Il21R-/-マウスとの掛け合わせではTfh細胞分化を抑制できた。この結果より、CD4DKOマウスにおいてはTet2/3の欠損によりTh17関連サイトカインが優位に産生されることが、Th17/Tfh細胞分化に重要であることが明らかとなった。また、異常増殖に関しては、T細胞分化とは独立して引き起こされることが示唆された。II. 制御性T細胞特異的Tet2/3欠損マウス(FDKO)を用いたTreg不安定化メカニズムの解明Tet2/3欠損によるTregの不安定化メカニズムを解明するため、WTおよびTet2/3欠損TregにおけるDNAメチル化状態をPostt-bisulfite Adaptor Tagging(PBAT)法により、オープンクロマチン状態をAssay for transposase-accessible chromatin using sequencing (ATAC-Seq)を用いて解析した。その結果、Tet2/3欠損TregではFoxp3遺伝子の約5kb上流領域に強いメチル化とATACピークの消失が認められ、本領域におけるFoxp3の安定性への寄与が示唆された。また、遺伝子発現(microarray), DNAメチル化状態(PBAT法, MBD-seq)、オープンクロマチン(ATAC-seq)の統合解析により、TregにおいてTet2/3により制御される遺伝子群を抽出することができた。この内容にて論文発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
「I. T細胞特異的Tet2/3欠損マウス(CD4DKO)におけるT細胞異常増殖分化メカニズムの解明」については、各種欠損マウスとの掛け合わせによる解析をほぼ終えることができた。CD4DKOマウスで増殖しているT細胞を用いた原因腸内細菌由来抗原の同定は進行中であり、また発症前後のT細胞を用いたマイクロアレイおよびRNA-seqはサンプルを準備段階で、いずれも次年度中に解析を終える予定である。「II. 制御性T細胞特異的Tet2/3欠損マウス(FDKO)を用いたTreg不安定化メカニズムの解明」については、DNAメチル化、遺伝子発現、オープンクロマチン状態の統合解析を終え、論文発表を行った。CRISPR/ Cas9法によるFoxp3遺伝子のCpG領域欠損マウス作製については着手したところである。よって、概ね順調に進展しているといえる。
今後はCD4DKOマウスのT細胞異常増殖のメカニズム解明のため、腸内細菌に焦点を当てて検討する予定である。腸内細菌叢の解析や腸由来抗原の同定を目指す。また、発症前後のT細胞を用いたマイクロアレイおよびRNA-seqの解析を行い、原因遺伝子の特定を試みる。また、FDKOマウスにおいて、TregがTh17細胞に分化するメカニズムの解明を引き続き行う。さらに、CRISPR/ Cas9法によるFoxp3遺伝子のCpG領域欠損マウス作製を行い、Treg不安定化への影響を解析することを計画している。
購入予定であった消耗品が海外製品で欠品であったため、今年度中に納品できず差額が生じてしまった。次年度使用額となった分は消耗品費として使用する予定である。
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