研究課題/領域番号 |
18K15201
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
小泉 真一 沖縄科学技術大学院大学, 免疫シグナルユニット, 研究員 (70636547)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / エフェクター型制御性T細胞 / 組織特異的免疫応答 / 転写因子 / JunB / 自己免疫疾患 / Treg |
研究実績の概要 |
制御性T細胞は転写因子Foxp3を高発現する免疫抑制性のT細胞であり、免疫恒常性の維持に非常に重要である。制御性T細胞の機能制御にはFoxp3に加えて非常に多様な転写因子が関与していること、また機能的に異なる制御性T細胞サブセットが転写因子によって生み出されることなどが分かっているが、いまだその全貌は明らかになっていない。申請者はAP-1転写因子の一つであるJunBに着目し、この転写因子の制御性T細胞における役割を、T細胞特異的JunB欠損マウスおよび制御性T細胞特異的JunB欠損マウスを用いて解析した。その結果、JunBは制御性T細胞が活性化し、エフェクター型制御性T細胞と呼ばれるサブセットへと分化した際に誘導されることがわかった。エフェクター型制御性T細胞は、特に組織における免疫抑制に重要であることが知られる。そこでさらに詳細に解析を行ったところ、JunBはエフェクター型制御性T細胞の機能に重要な分子群を制御していることが明らかとなった。また、JunBの欠損によりエフェクター型制御性T細胞の生存率や抹消組織への移動効率が著しく減少することも示された。興味深いことに制御性T細胞特異的JunB欠損マウスは自己免疫疾患を発症したが、強い炎症が起こった組織は限定的であった。さらに、申請者はRNA-seq解析およびChIP-seq解析から、JunBは転写因子IRF4の機能を部分的に調節し、エフェクター型制御性T細胞機能の一部を制御していることを明らかとした。これらの知見は、エフェクター型制御性T細胞の機能を部分的に制御する新たな疾患の治療法の開発につながる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予定通り2種類のJunBのコンディショナル欠損マウスの解析を進め、JunBの制御性T細胞における重要性を明らかにした。さらに、本研究成果に関して2度の学会発表を行い、国際誌に原著論文として報告した (Koizumi et al., Nature communications.)。一方予定していたヒストン修飾のChIP-seq解析が予定よりも進行しなかったのは残念である。しかしながら全体として評価すれば、当初の予定通り順調に研究を遂行することができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1) 制御性T細胞特異的JunB欠損マウスにおいて炎症が起こる組織は限定的であることから、JunBはエフェクター制御性T細胞の機能を部分的に制御していると考えられる。そこで組織特異的な制御性T細胞の免疫抑制機構についての解析を進めていく。具体的には、制御性T細胞特異的JunB欠損マウスで炎症が起こっていない組織に高発現する分子の中で、逆にその組織で強く炎症が起こる転写因子欠損マウスで減少する分子を抽出し、その分子の実際の組織での重要性とその発現の制御機構について解析する。 2) エフェクター型制御性T細胞の分化には、まだほかのAP-1転写因子の関与が予想される。CRISPR/Cas9システムを利用し、網羅的に他のAP-1転写因子の重要性を解析する。 3) 昨年度十分に解析できなかったヒストン修飾の解析に加え、シングルセル解析などの新規技術の導入を検討している。ヒストン修飾の解析に関しては、少ない細胞でも対応でき、より安価な解析技術の導入を進めている。また、シングルセル解析は現在の主流となる手法はあまりにも高価であるため、安価で簡便に遂行可能な新規手法の導入を試みる予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子欠損マウスの解析が順調に進んだため、予定よりも試薬の使用量を減らすことができた。この研究費は、次年度の新規解析手法の導入費用に使用する予定である。
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