昨年度に行った研究により、転写因子JunBがエフェクターTregの機能および維持に重要であることが明らかとなった。さらにその分子機構として、JunBは転写因子IRF4が正常に機能する為に重要であること、しかしながらその影響は部分的であることも明らかとなった。Treg特異的IRF4マウスは重篤な皮膚炎を起こすことが知られているが、Treg特異的JunB欠損マウスは皮膚炎を発症しないことから、皮膚におけるTregの機能あるいは維持に重要な可能性が考えられた。最近になって皮膚TregはGATA3を高発現すること、Treg特異的GATA3欠損マウスでは皮膚炎が生じることが報告された。これと一致して、IRF4欠損TregではGATA3の発現が減少するのに対し、JunB欠損TregのGATA3発現は通常と変わらない。そこでChIP-seq解析により、JunB欠損TregにおけるGATA3遺伝子座へのIRF4の結合を確認した。その結果、予想通りJunBが欠損してもIRF4の結合に変化はなかった。したがって、IRF4はJunBではない他のAP-1転写因子と相互作用することで、皮膚Tregの機能に関与している可能性が示された。このAP-1転写因子を同定するために、CRISPR-cas9を用いた試験管内での遺伝子欠損Tregの作製と、そのTregを移入することによる転写因子の機能評価モデルを現在検討している。 また、炎症の質的変化をとらえるために、新たにシングルセルRNA-seqの立ち上げを行った。当初計画していたSPLIT-seq法はデータ自体は得ることができたものの、細胞当たりの遺伝子数が十分でなく、満足できるデータを得ることができなかった。その後Drop-seq法による解析をを試みたところ、非常に質の良い安定したデータを得ることができた。今後はこの手法を用いて解析を進めていく予定である。
|