神経芽腫におけるPRC2の役割について、MYCNとPRC2の責任分子であるEZH2が物理的に結合することを報告した。また、EZH2がN-MycのドメインMyc box Ⅲ (MBⅢ) を介して結合するという報告がある。MYCNとの結合を手がかりにして、神経芽腫へのEZH2の寄与とその分子機構を明らかにするため、本研究課題ではこれまでに以下の実験を行った。 (実験1)Corvettaらは、EZH2がMYCNのMB3ドメインを介して結合していることを報告したが、細胞内での結合については結果が不十分であった。そこで、MB3を欠損したMYCNをMYCN非増幅型の神経芽腫細胞株で発現させ、免疫沈降と近接ライゲーションアッセイを行った。その結果、MB3欠損MYCNも十分にEZH2と結合するということが明らかになった。これらの結果から、MYCNはMB3以外のドメインでEZH2と結合している可能性が示唆され、当初の計画を大幅に変更せざるを得ない状況になった。 (実験2)MYCNとEZH2の複合体によって発現制御される遺伝子群を網羅的に同定するために、MYCNとEZH2が発現し細胞内での結合を確認した神経芽腫細胞株を用いてクロマチン免疫沈降シーケンスを行った。現在、そのデータ解析中である。 (実験3)MYCNとEZH2の複合体構造解析へ向け、幾つかの方法で各タンパク質を大腸菌及びin vitro翻訳システムを用いて発現させたが、残念ながら全長タンパク質の発現効率が著しく低く、大腸菌では不溶性画分となった。現状タンパク質合成は難しいと判断した。
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