研究課題/領域番号 |
18K15209
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 宏樹 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (20725452)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CML(幹)細胞 / 間葉系幹細胞 / T細胞 / Rap1 / Sipa1 / ケモタキシス |
研究実績の概要 |
Sipa1遺伝子破壊マウスは、Bcr-Abl融合遺伝子を強制発現させた慢性骨髄性白血病(CML)(幹)細胞を排除すること見出した。Sipa1遺伝子破壊マウスが示すCML抵抗性を担う免疫担当細胞の同定するため、各種免疫細胞を除去する抗体および特定の免疫細胞を欠く遺伝子改変マウスとの重変異マウスを作製し、CML(幹)細胞移植実験により検証した結果、CD4+T細胞およびCD8+T細胞がCML(幹)細胞の排除に必要であることを明らかにした。さらに、皮下移植の実験系を用いて、マウスにCML(幹)細胞を移植すると、野生型マウスと異なりSipa1遺伝子破壊マウスの腫瘍塊内には間葉系幹細胞および免疫細胞が認められ、腫瘍の排除を行っていることが明らかとなった。さらに、腫瘍内のT細胞や間葉系幹細胞の解析をすると、Sipa1遺伝子破壊マウスでは、T細胞や間葉系幹細胞は活性化しており、CML(幹)細胞に対して細胞遊走能が亢進していることも見出した。CML(幹)細胞、間葉系幹細胞、T細胞のクロストークを詳細に検討したところ、CML(幹)細胞が産生するPDGF-AAに対して、Sipa1遺伝子破壊マウスの間葉系幹細胞は野生型に対して強い遊走能を示すこと、間葉系幹細胞が産生するケモカインに対して、Sipa1遺伝子破壊マウスのT細胞は強い応答性を示すことが明らかとなった。Sipa1遺伝子破壊マウスの腫瘍内ではCXCL9の発現が亢進しており、このことによりメモリーT細胞の腫瘍内へのリクルートが増強されることを明らかにした。このような、CML(幹)細胞、T細胞、間葉系幹細胞のクロストークによりSipa1遺伝子破壊マウスのCML細胞排除機構の一端を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した研究はすべて順調に進行している。CML移植モデルを用いて、Sipa1遺伝子破壊マウスの腫瘍排除機構の一端を明らかにした。さらに、チロシンキナーゼ阻害剤に対して抵抗性を示すBCR-ABLの変異を導入したCML(幹)細胞の移植実験をおこない、Sipa1遺伝子破壊マウスが示す腫瘍排除機構が治療抵抗性の変異細胞でも示すか検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って順調に研究が進行している。今後は、CML以外のがん細胞の移植実験および発がんモデルマウスとの重変異マウスを作製し、Sipa1遺伝子破壊マウスが拒絶するがんを明らかにし、CMLモデルと同様のメカニズムか否かを検討する。さらに、Rap1/Sipa1シグナルにおけるケモカイン産生制御機構を解明し、がん細胞の制御に関与する分子を探索し、このように同定した分子に対して、機能阻害もしくは発現調節できる抗体や化合物を用いて癌制御に必須な分子であるか検証し、正常マウスの抗腫瘍効果を増強しうる分子か検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していなかった、マウスへの抗体投与実験をおこなうため、本年度の助成金使用額を抑えたため、次年度使用額が生じた。次年度は、追加で担癌マウスの抗体治療実験をおこなうので、それに使用する抗体の購入費用に使用する。
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