研究課題/領域番号 |
18K15213
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
幾尾 真理子 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (60713401)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞外小胞 / Extracellualr vesicle / エクソソーム / 多発性骨髄腫 / Smad / 骨芽前駆細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多発性骨髄腫細胞による骨芽前駆細胞分化阻害分子機構における細胞外小胞(エクソソーム、Extracellualr vesicle、EV)の関与及びその分子機構を明らかにすることである。本年度の目的はEV中の骨分化抑制因子候補選定である。 骨芽前駆細胞を分化因子BMP2で刺激すると、BMP/Smad経路因子であるSmadが核内に移行し、転写因子としてはたらく。申請者はこれまでに、多発性骨髄腫由来EVによる核内Smadの転写因子活性を抑制することを明らかにし、またSmad及びEVに応答するプロモーター領域を同定した。同プロモーター領域に作用しSmadと逆の効果を示すDNA結合因子に着目し以下の点を明らかにした。 転写因子Aは、標的遺伝子の発現を促進し、またSmadによる転写活性化を抑制する。マイクロアレイ法及びリアルタイム定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(quantitative real-time reverse transcription polymerase chain reaction)の結果、多発性骨髄種由来EVの添加により骨芽前駆細胞における転写因子A標的遺伝子の発現が上昇した。細胞免疫染色法の結果、多発性骨髄種由来EVによって骨芽前駆細胞核内の転写因子Aが増加した。転写因子Aを活性化するサイトカインは骨芽前駆細胞の骨分化を抑制した。多発性骨髄腫由来EV中に転写因子Aタンパク質が存在した(ウェスタンブロット法)。転写因子A不可逆的阻害剤を多発性骨髄腫由来EVに作用させると骨分化抑制活性が失われた。 これらの結果は多発性骨髄腫由来EVの骨分化抑制能における、EV中の転写因子Aの必要性を示唆する。以上の結果の一部について現在論文投稿段階にある(Journal of Extracellular Vesicles、in revise)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究について論文投稿準備が進んでおり、また初年度に予定していた研究項目についても順調に推移しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今回見出しEVを介した転写因子Aの伝播による骨分化抑制機構の普遍性について検討する。 1)多発性骨髄細胞株以外の骨分化抑制活性においても当該転写因子Aが必要であるか検討する。 2)今回用いた骨芽前駆細胞株以外のヒト培養細胞株や間葉系幹細胞株においてもEV-転写因子Aによる骨分化抑制機構が働くか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた抗体や学会参加費・旅費等が不要であったり、無料サンプルや既に入手している材料で賄うことができたため。 使用計画:基本的に当初の研究計画にそってすすめる。当該経路に関わる因子の探索時に検討対象の分子や検討条件などを増やし、そのために必要な抗体などの試薬類を次年度使用額を活用して購入する。
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