研究課題
ERBB2 (HER2) 遺伝子変異は非小細胞肺癌の2-4%に認められ、いわゆるドライバー遺伝子変異の一つと考えられているが、HER2チロシンキナーゼ阻害剤の効果が乏しいことが報告されている。一方、抗HER2抗体とチューブリン重合阻害剤複合体であるトラスツズマブ・エムタンシ(T-DM1)は奏効率が44%と良好であったことが報告されており、HER2遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に対する治療として今後の臨床応用が期待されている。本研究においては、HER2遺伝子変異陽性肺癌の分子生物学的特性を明らかにするとともに、T-DM1のようなAntibody-Drug Conjugate (ADC)のHER2遺伝子変異陽性肺癌に対する作用機序を明らかにする。また、血中の腫瘍由来抹消循環遊離DNAを用いた非侵襲的なドライバー遺伝子変異の検出、有用性を示すことを目的とする。各がん細胞株におけるHER2発現量をFACSで定量し、トラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)のIC50とHER2発現量の関係を調べた。HER2発現が多いほどT-DM1の効果が強い傾向にあったが、遺伝子変異陽性細胞株においてはHER2の発現が少なくてもT-DM1の効果が強い傾向にあった。PLA法を用いることでHER2のホモダイマー、HER2とEGFR, HER3のヘテロダイマーを検出、各ダイマーの内在化の検出に成功した。EGFR(活性型)遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌症例を100例登録し、EGFR-TKI治療前(Baseline)、EGFR-TKI投与後12週毎に病勢増悪まで前向きに血漿を採取し、Digital PCR、次世代シークエンサー(NGS)にて解析を行った。EGFR(活性型)遺伝子変異陽性症例における血漿中のEGFR(活性型)遺伝子変異の存在や消失、アレル数の増加の有無はEGFR-TKI治療の効果予測因子であると考えられ、本年度に報告を行った(Iwama E. Cancer 2019)。
2: おおむね順調に進展している
予定している基礎研究について概ね順調に行うことが出来ている。研究期間中にリキッドバイオプシーの有用性について論文報告を行っている。引き続き当初の予定通り本研究を推進する予定である。
変異型HER2、野生型HER2遺伝子の安定発現株を作成し、これまでに得られた現象について確認を行う。ダイマー形成と内在化に関して、HER2だけでなく他のドライバー遺伝子変異についても探求し、本研究の重要性を深める。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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