研究実績の概要 |
HER2遺伝子変異は非小細胞肺癌の2-4%に認められ、いわゆるドライバー遺伝子変異の一つと考えられている。抗HER2抗体とチューブリン重合阻害剤複合体であるT-DM1はHER2遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に対する良好な抗腫瘍効果が報告されている。本研究においては、HER2遺伝子変異陽性肺癌の分子生物学的特性を明らかにするとともに、T-DM1のような抗体薬物複合体のHER2遺伝子変異陽性肺癌に対する作用機序を明らかにする。また、血中の腫瘍由来抹消循環遊離DNAを用いた非侵襲的なドライバー遺伝子変異の検出、有用性を示すことを目的とする。 各がん細胞株におけるHER2発現量をFACSで定量し、T-DM1の効果とHER2発現量の関係を調べたところ、HER2発現が多いほどT-DM1の効果が強い傾向にあったが、EGFR遺伝子変異陽性細胞株においてはHER2の発現が少なくてもT-DM1の効果が強い傾向にあった。PLA法を用いることでHER2-HER2ホモダイマー、HER2-EGFR, HER2-HER3のヘテロダイマーを検出、各ダイマーの内在化の検出を行った。HER2ホモダイマーは細胞表面上に、HER2-EGFR, HER2-HER3ヘテロダイマーは細胞内に局在していた。トラスツズマブを蛍光標識し、細胞表面のHER2取り込みを観察したところ、HER2の発現量よりもEGFRの発現量に比してHER2の内在化が顕著であり、HER2-EGFRヘテロダイマーを介したHER2の内在化が考えられた。 EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌症例に対して前向きに血漿を採取し、Digital PCR、次世代シークエンサーにて解析を行った。EGFR遺伝子変異陽性症例における血漿中のEGFR遺伝子変異の存在や消失、アレル数の増加の有無はEGFR-TKI治療の効果予測因子であると考えられた。
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