研究課題
昨年度までに、EGFR高発現脳腫瘍細胞ではxCTが高発現することでグルタミン酸放出が亢進、グルタミン酸受容体が活性化し、悪性形質の一つである遊走能が促進されることを明らかにした。このような、xCT, EGFR高発現脳腫瘍に対して、xCT阻害剤とグルタミン酸受容体阻害薬(NMDA受容体阻害薬)併用の抗腫瘍効果を確認するところまで到達できた。しかし、課題として、両者の併用で一定の抗腫瘍効果は認めるも、完全な腫瘍抑制まで至れない点が残った。そこで本年は研究の概念をさらに発展することを目指した。近年、様々ながん種でPD-1/PD-L1,CTLA-4などの免疫チェックポイント分子を標的とした治療法の有用性が報告されている。xCT発現腫瘍においては、xCT阻害と免疫チェックポイント阻害薬の併用の有効性が報告されている。しかし一般に免疫チェックポイント阻害薬の有効性は、免疫チェックポイント分子の発現レベルと関連することも報告されている。そこで、免疫チェックポイント分子にも着目して研究を進展させることにした。大腸癌細胞株HCT-116やHT-29は、xCT,またがん幹細胞マーカーであるCD44を発現することが報告されている。これらのPD-L1の発現を検討したところ、HCT-116ではPD-L1発現を確認できたが、HT-29では、mRNA, 蛋白レベルいずれにおいても発現を認めなった。その他、複数のがん細胞株でPD-L1発現の検討を行ったが、発現レベルに差を認めた。このように、xCT発現腫瘍細胞のさらなる治療展開として免疫チェックポイント阻害剤の併用を検討していく場合でも、PD-L1発現に差異があることを考慮する必要が示された。今後、このような免疫チェックポイント分子の発現制御機構にも着目して研究を継続する予定である。
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Am J Respir Cell Mol Biol
巻: 61 ページ: 367, 379
10.1165/rcmb.2018-0231OC