研究課題
膵癌は予後が極めて不良な疾患であり、新たな治療開発が最も求められる領域である。近年免疫チェックポイント阻害療法が消化器癌領域でもその治療効果が報告されているが、膵臓癌では効果が確認された報告は少ない。本研究では、他の消化器癌では、実臨床で既に効果が確認されている免疫チェックポイント阻害療法において、膵癌で効果が期待できる症例を選別する効果予測のためのバイオマーカーの検索を目的としている。我々は、現在広く治療で使用されている免疫チェックポイント分子、PD-1、CTLA4をはじめ、報告が散見されるTim-3やLAG3なども含め、作成した膵癌モデルで免疫チェックポイント阻害剤を用いた治療効果を検討することを計画している。現在は実際の臨床検体で、癌細胞側の免疫チェックポイント分子のligandの発現を確認し、また腫瘍浸潤リンパ球(TIL)での免疫チェックポイント分子の発現も確認することで、それぞれの免疫チェックポイント経路が実際に膵癌で効果が期待できるかどうかを検討している。本研究では、最終目標を臨床で有用な正確な膵癌における免疫チェックポイント阻害療法の効果予測因子を同定としている。臨床検体での検討後は、in vitro, in vivoでの膵癌モデルを作成し、そのモデルを用いて、癌細胞とT細胞の遺伝子発現プロファイルを作成する。作成したモデルにおける治療奏功や耐性に関連する遺伝子を同定し、効果予測因子となり得るバイオマーカーを決定する。最終的に手術切除膵癌検体、患者血清を用いて、同定した分子が有用であるか検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
昨年に引き続き臨床検体での検討を行っている。膵癌に対して手術施行した症例のうち、術前に化学療法や放射線療法などの加療が行われていない症例でこれらの分子の発現を確認した。腫瘍側のligandの発現はPD-L1など、現在広く使用されている免疫チェックポイント阻害療法のligandの発現は、多くの膵癌症例で少ない結果であった。しかし、Tim-3のligandであるGalectin-9の発現は多くの膵癌症例で強く認められた。その他の分子も現在発現を確認しているが、これらの発現の差異が、それぞれの免疫チェックポイント阻害剤の効果と関連する可能性を考えている。また、Galectin-9は膵癌症例の予後とも発現が相関することが示唆された。今後、胃癌など実際に免疫チェックポイント阻害療法の治療効果が報告されている他の癌腫との発現パターンの違いを検討することも計画している。
本研究での最終目的は臨床で有用なバイオマーカーの検索であるため、臨床検体、予後も含めた症例のデータが非常に重要である。申請者は消化器外科所属であり、検討に必要な膵癌の手術標本や症例のデータについては、常に利用可能であり、また、今後の実験に関しても、当教室では膵癌の基礎研究を継続して行っており、次年度も問題なく、遂行可能と思われる。
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