研究課題
本研究では、慢性胃炎および胃がん関連長鎖non-coding RNA (lncRNA) として同定したTM4SF1AS1が、どのようなシグナルパスウェイや分子ネットワークに作用しがんに関与するのか、その作用機序を明らかにすることを目的とした。始めにTM4SF1AS1が細胞内在的に相互作用する結合タンパク質の網羅的同定を行い、143個のタンパク質を候補として得た。リボソームタンパク質、翻訳開始因子やストレス顆粒の構成因子などを含めストレス顆粒の特徴を示すものが多く含まれていた。その中からTM4SF1AS1と直接相互作用するタンパク質として、ストレス顆粒形成に関わるG3BP2、がん遺伝子やアポトーシス制御に関連する6つのタンパク質を同定した。さらにストレス顆粒マーカーG3BP2の免疫蛍光染色により、TM4SF1AS1の過剰発現はストレス非存在下で細胞質内の顆粒形成を促進すること、またそのノックダウンはその形成を減弱することから、TM4SF1AS1はストレス顆粒様構造体の形成促進に関与することが示唆された。またストレス顆粒はストレス応答性MAPKシグナルを介するアポトーシスを制御することが報告されていることから、TM4SF1AS1のノックダウン実験による検証を行った結果、ストレス応答性MAPK p38のリン酸化レベルとアポトーシスが亢進することを明らかにした。よって、TM4SF1AS1はストレス応答性MAPK p38の活性化を介したアポトーシスを抑制することが示唆された。以上より、慢性炎症および胃がん関連新規lncRNA TM4SF1AS1の胃がんにおける機能として、ストレス顆粒様構造体を介しがん細胞のストレス耐性を増強させ、アポトーシスによる細胞死の抑制に関与することが示唆された。
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