研究課題
2018年度は悪性腫瘍におけるドパミン受容体に対するアンタゴニストが細胞内活性酸素種の蓄積を誘導するメカニズムを明らかにすることを目的として研究を行った。細胞内で産生される活性酸素種には過酸化水素、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカルやパーオキシナイトライトなどの種類が知られているが、ドパミン受容体アンタゴニストが制御する活性酸素種は不明であった。そこで、各種活性酸素種に特異性を持つ蛍光プローブを用い、ドパミン受容体アンタゴニストにより誘導される活性酸素種の同定を試みた。その結果、ドパミン受容体アンタゴニストにより過酸化水素特異的蛍光プローブにおいて強い蛍光が認められた一方、スーパーオキシドやパーオキシナイトライトに対する蛍光プローブではほとんど変化が認められなかった。また、ドパミン合成酵素であるドパ脱炭酸酵素に対する阻害剤ベンセラジドにおいても同様の結果が得られた。以上のことから、ドパミン受容体アンタゴニストにより誘導される活性酸素種は過酸化水素であることが示唆された。
3: やや遅れている
本年度は主に腫瘍細胞におけるドパミンシグナルが細胞内代謝を制御する機序に着目し、そのシグナル伝達経路を明らかにする計画であったが、所属機関の異動があり、実験系の再構築が必要となったことや遺伝子組換実験を新たに申請する必要があったため、当初予定していた通りの実験が行えず、進捗状況を【やや遅れている】とした。現在、現所属機関での実験系の再構築はおおよそ完了しているため、今後は当初の計画通りに研究を進めることができると考えている。
現在、ドパミンシグナルによる活性酸素種の制御に寄与するシグナル経路を明らかとするため、ドパミンシグナル下流分子に対するsiRNAや阻害剤を準備しており、そのシグナル経路を明らかとする計画である。また、複数ある受容体のうち、活性酸素種の制御に寄与する受容体についても同定を試みる。また、ドパミン受容体アンタゴニスト及びドパミン合成阻害剤がミトコンドリアに対して抑制的に作用することから、細胞内活性酸素種の制御とミトコンドリア機能制御の関連性について検討を行う。
2018年度は所属機関の異動があったため、当初予定していた実験計画の一部が行えなかった。そのため、2018年度に予定していた実験の一部を2018年度使用予定であった研究費にて行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Cancer Science
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