研究課題
近年、がん局所での免疫環境が免疫療法の効果のみならず、化学療法の効果や予後に影響を与える可能性が示唆され、がん免疫微小環境の制御、改善の重要性が認識されている。がん局所ではさまざまな機構で免疫抑制状態が誘導されており、これらを標的とする免疫療法が開発されているが、既存の化学療法に関してもがん細胞を直接傷害する効果に加え、がん細胞からの免疫抑制分子の産生を阻害する効果や、免疫担当細胞に対して免疫増強を誘導する効果によりがん免疫微小環境の改善ができる可能性がある。本研究では、進行期非小細胞肺がん症例を対象として、がん局所の免疫微小環境が化学療法の治療効果に影響を及ぼすかどうかを明らかにする。本年度は、肺がん局所の免疫微小環境を解析するため、がん性胸水検体を用いて、腫瘍局所浸潤免疫担当細胞の解析をフローサイトメトリー法で実施し、本研究における解析方法を確立した。胸水中T細胞(CD3, CD4, CD8)、制御性T細胞(FoxP3+ Treg)その他の免疫担当細胞の割合および免疫チェックポイント分子、およびリガンドをフローサイトメトリー法で解析した。がん性胸水48例において、末梢血単核球と胸水中リンパ球を比較したところ、胸水ではCD3+T細胞の割合が高く、CD4/8比が有意に上昇していた。今までの報告と異なりFoxP3+Tregの増加は認めなかったが、CTLA-4+FoxP3+Tregが増加していた。また、T細胞上のPD-1発現が著明に上昇し、一方で増殖マーカーであるKi-67+CD3は有意に低下していた。また、腫瘍細胞における表面マーカー解析として、EPCAM陽性細胞を腫瘍細胞とし、PD-L1やGalectin-9といった抑制性分子の解析方法を固定した。腫瘍細胞、あるいはMφにおけるPD-L1発現とCD8+T細胞、Tregの関連性を検討したが、明らかな相関関係は認めなかった。
3: やや遅れている
解析方法の確立は当初の予定通り行えた。がん組織の検体採取について、新鮮検体の迅速な解析が必要である点と、共同研究者や研究協力者の異動などもあり、検体解析にやや支障をきたしており、検体数の確保が当初の予定より遅れている。
引き続きがん組織の検体解析を続けていくが、当初より進捗が遅れており、研究期間の延長も視野に入れる必要がある。
検体確保がやや遅れており、解析費用の使用額が少なくなっている。次年度において、がん組織検体のフローサイトメトリー解析および免疫染色解析のための実験器具および染色抗体、フローサイトメトリー機器のメンテナンス費用等に充てる。研究期間の延長も視野に入れる。
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