研究実績の概要 |
本研究では、進行期非小細胞肺がん症例を対象として、がん局所の免疫微小環境が化学療法の治療効果に影響を及ぼすかどうかを明らかにする。肺がん局所の免疫微小環境を解析するため、がん性胸水検体を用いて、腫瘍局所浸潤免疫担当細胞の解析をフローサイトメトリー法で実施し、本研究における解析方法を確立した。胸腔穿刺後、胸水検体にヘパリンを添加して研究室へ運搬、遠心して上清を捨て、PRMIメディウムを追加し、Ficol比重遠心分離(400g×30min)を行い、スポイトにてリンパ球層(腫瘍細胞を含む)を回収し、これを液体窒素にて保存した。がん性胸水は多数の死細胞を含むため、死細胞染色(Fixable Viability Stain)にてこれを除外し、胸水中T細胞(CD3, CD4, CD8)、制御性T細胞(FoxP3+ Treg)その他の免疫担当細胞の割合および免疫チェックポイント分子、およびリガンドをフローサイトメトリー法で解析した。がん性胸水45例(当初48例であったが、後に乳がんによる胸水と判明した1例、複数回採取されていた2例、計3例を除外した)について解析を実施した。末梢血単核球と胸水中リンパ球を比較したところ、胸水ではFoxP3+Tregの増加は認めなかったが、CTLA-4+FoxP3+Tregが増加していた。また、T細胞上のPD-1発現が著明に上昇し、一方で増殖マーカーであるKi-67+CD3は有意に低下していた。患者背景を追加し、その後の治療内容および治療効果、予後との関連について検討中である。
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