本研究の目的は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)による、中枢神経系胚細胞腫瘍(CNSGCT)の疾患感受性遺伝子の同定である。本研究計画に賛同し倫理審査を通過した、全国の10の医療機関において、CNSGCTの患者・サバイバー150名から研究参加の同意を得られた。実際に採血された末梢血検体は、委託機関エス・アール・エルに送付され、その後DNAの抽出が行われた。研究代表者の施設で行われたDNAのクオリティコントロールの結果、ゲノタイピングに十分な質と量が得られたDNA検体は合計で138件であった。 はじめに、抽出・分注されたDNA検体138人分が、研究協力機関のひとつである大阪大学遺伝統計学教室(岡田随象教授)に送付された。岡田研究室では、日本人用にカスタマイズされたSNPアレイを用いたゲノタイピングが行われた。現在、CNSGCT発生と関連のあるHLAタイプおよび遺伝子を同定するためのデータ解析を行っている。 一方、DNA検体138人分は同様に、もうひとつの研究協力機関であるコネチカット大学(Ching Lau教授)に送付された。Lau研究室では、全ゲノム解析(whole genome sequencing)を用いたゲノタイピングが進行中である。今後その結果は解析され、CNSGCT患者に高頻度に起こるvariationおよびmutationを同定する予定である。 また、上記10の協力施設では、引き続き患者・サバイバーのリクルートが行われており、上記の実験で同定された、関連遺伝子、その変異およびHLAタイプを確認するためのvalidationコホートサンプルを収集している。
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