研究課題
上皮間葉転換(EMT)とその逆反応であるMETは癌悪性化の様々なステップで重要である。EMTは癌細胞の細胞死抵抗性や運動性を亢進させ、再発や血管への移行を促進する。また、遠隔臓器へ移動した癌細胞はMETによって上皮様形質を再獲得し活発に増殖して転移巣を形成する。現在までにEMT/METによる上皮・間葉形質の可塑性の詳細な分子機構は解明されておらずこの機構を標的とした治療法は存在しない。我々は以前に、分子標的治療法が存在しないTriple-negative乳癌(TNBC)において一部の細胞株では上皮様と間葉様の細胞が一定の比率で共存していることを見出し、腫瘍内における上皮・間葉形質の可塑性を解析可能なモデルとして提唱した。本研究では、この可塑性を誘導する遺伝子についてCRISPR/Cas9とプール型gRNAによって網羅的な解析を試みた。既知のEMT関連遺伝子に対するgRNAの影響を評価し、これらのgRNAを用いたgRNAプールを作成して目標とするゲノムワイドスクリーニングに必要な感度を持つ実験系を構築した。さらに、多数の細胞を抗体を用いずに上皮間葉画分を安定的に分取するためにE-cadherinとVimentinプロモーターを用いた蛍光レポーター細胞を作成し、抗体染色と同程度の分画が可能なことを確認した。これらを用いて2万遺伝子に対する6万種類のgRNAによるEMT関連遺伝子のスクリーニングを行い、既知のEMT/MET関連因子と共に様々な遺伝子がTNBCの上皮・間葉形質の可塑性に関与していることを明らかにした。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
J. Biol. Chem.
巻: 294 ページ: 5677-5687
doi:10.1074/jbc.RA118.004579.
Communications Biology.
巻: 2 ページ: ArticleNum.292
doi:10.1038/s42003-019-0547-7