研究課題/領域番号 |
18K15238
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
北沢 将人 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (10467152)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | KRAS変異 / 大腸癌 / MEK阻害剤 / BCL-XL阻害剤 |
研究実績の概要 |
肺癌のEGFR変異に対するゲフェチニブやエルロチニブの効果は70-80%、ALK癒合変異に対するクリゾチニブの効果は65%と報告されており、変異分子を標的にした治療は極めて効果が高い。変異型KRASはEGFR変異やALD癒合変異と同様に下流の分子を恒常的に活性化し、増殖、浸潤、転移等に強く関与しているが、それを標的とした治療は未だ見出されていない。 我々はIn vitroでKRAS遺伝子変異大腸癌に有効な薬剤をスクリーニングし得るミックスカルチャーアッセイを確立し、①KRAS変異大腸癌細胞はMEK阻害剤の感受性が高いこと、②MEK阻害剤の長期使用により抗アポトーシスタンパク(BCL-2やBCL-XL)の発現が上昇すること、③MEK阻害剤とBCL-2、BCL-XL阻害剤の併用はより選択制の高い分子標的治療になり得ることを明らかにした。 さらに我々は、MEK単独阻害とMEKとBCL-XL同時阻害による細胞死のメカニズムや、抗アポトーシスタンパクの機能解析を行った。KRAS遺伝子変異を有する大腸癌細胞はKRAS野生型と比較し、BCL-XLのタンパク発現量が有意に上昇しており、BCL-XL阻害剤にてアポトーシスが誘導され易いことを証明した。また、In vivoでも、ヌードマウスに皮下移植実験にてMEK阻害剤とBCL-2、BCL-XL阻害剤の併用が、KRAS変異大腸癌に有効であることを証明した。 本研究の成果は、International Journal of Oncology (Koyama M, Kitazawa M, et al. Int J Oncol.2020;57:1179-91 に掲載され、2020年日本癌治療学会総会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果は、International Journal of Oncology (Koyama M, Kitazawa M, et al. Int J Oncol.2020;57:1179-91 に掲載され、2020年日本癌治療学会総会にて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌細胞株、肺癌細胞株を用いて、KRAS変異遺伝子、G12D、G12V、G13Dを導入する。同様にMEK阻害剤とBCL-XL阻害剤の併用が有効であるかを検証する。また、新規薬剤であKRAS G12C選択阻害剤の有効性と併用効果のある薬剤のスクリーニングをミックスカルチャーアッセイを用いて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症蔓延のため、海外学会の発表を行わず、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は令和3年度請求額と合わせて、細胞培養、ウエスタンブロッティング、遺伝子導入試薬等に使用すると伴に、海外学会の発表経費に使用させて頂きます。
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