研究課題
申請者らはこれまでにタモキシフェン塗布誘導性に口腔特異的にHippo経路遺伝子MOB1を欠損させることで、頭頚部扁平上皮癌 (HNSCC) の発症モデルマウスを樹立している。このモデルマウスを用いて、昨年度はHippo経路のエフェクター分子YAP1がHNSCCの発症に重要であること、YAP1-TEAD結合阻害剤VerteporfinがHNSCCの発症を予防できることを明らかにした。本年度はHNSCCで高頻度に認められる遺伝子異常 (EGFR、p53、PTEN、FAT1など) がHippo-YAP1経路に影響を及ぼすのかどうかを検討した。HPV陰性のHNSCC患者由来細胞株WSU-HN30にEGF刺激、あるいはsiRNAを用いて種々の遺伝子をノックダウンしたときのYAP1活性変化を解析したところ、EGF刺激やp53、PTEN、FAT1のノックダウンによってそれぞれYAP1活性が上昇することが認められた。さらに、これらのがん抑制遺伝子を複数ノックダウンすると、より強力にYAP1が活性されることを見出した。以上の結果から、HNSCCで高頻度に認められるEGFR、p53、PTEN、FAT1といった遺伝子異常の蓄積によってYAP1の活性化が誘導され、がんの発症・進展に寄与することが示唆された。また、YAP1がHNSCCの治療標的となる可能性を提示し、報告した (Omori et al. Sci Adv. 2020)。
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Sci Adv.
巻: 6(12) ページ: eaay3324
10.1126/sci adv .aay3324.