研究課題
本年度はBHLHE41の発現制御機構について解析を行った。脱メチル化剤の処理によってBHLHE41の発現が増加することからプロモーター領域のメチル化に着目し調べたところ、バイサルファイト処理後のシークエンス解析ではBHLHE41のプロモーター領域(+222--1236)でメチル化は観察できなかった。しかし、脱メチル化剤処理後にBHLHE41のプロモータ活性は上昇することから転写因子がメチル化している可能性が示唆された。また、メチル化とは別にBHLHE41のプロモーター活性からBHLHE41を正に調節する転写因子の検索を試みたが、特異的な領域を絞ることが出来なかった。BHLHE41のタンパク質分解の解析ではBHLHE41のユビキチン‐プロテアソーム経路に注目し、BHLHE41とユビキチンとの免疫沈降を行ったところ、BHLHE41のスメア状のバンドが観察され、さらにプロテアソーム阻害剤MG132を処理するとBHLHE41のスメア状のバンドがより強く観察された。このことから、BHLHE41はユビキチン化によって分解されていることが強く示唆された。肺腺癌におけるBHLHE41の解析についてはオートファジーが関わっていることが示唆されており、実際にオートファジーが関わっているかを検討した。flux assayとautophagy watchの二種類で解析したところ、両方においてオートファジーが起こっていることを確認した。in vitroの結果がin vivoでも得られるかをBHLHE41発現誘導細胞をマウスに移植し、発現誘導ありなしで腫瘍の大きさを比較した。その結果、BHLHE41を発現している方で腫瘍が小さいことがわかり、in vivoでも同じ結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
発現制御解析においてメチル化や転写因子の同定については良い結果が得られなかったが、タンパク質分解の解析ではユビキチン化によってタンパク質分解が起こっていることがわかった。がん遺伝子の増幅を減少できるかを検討するためにMYCNが増幅している細胞株からBHLHE41の発現誘導株を作製した。肺腺癌細胞株を用いたxenograft実験ではBHLHE41の発現誘導時に腫瘍増殖抑制効果が見られた。
MYCNが増幅している細胞株でBHLHE41の発現誘導で遺伝子増幅が減少するかを検討する。他の遺伝子増幅している細胞株でも発現誘導株を作製し、検討する。BHLHE41のユビキチン化部位を同定するためにBHLHE41の発現ベクターを用いてリジンを別のアミノ酸に置換し、免疫沈降しユビキチンの度合いを観察する。MIAPaCa-2とMGEM6のBHLHE41のプロモーター解析でBHLHE41の転写因子を同定する。
発現制御解析においてメチル化解析や転写因子解析の結果がよくなく当初予定していた解析まで進めなかった。タンパク質分解解析については計画通りの結果が得られているので翌年度はタンパク質分解解析のほうでより詳細に解析するために複数の抗体を購入予定である。プロモーター解析を予定しているのでプロモーター解析用の試薬の購入やその他、qPCR試薬や生化学的実験試薬、細胞培養試薬等を購入予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
Oncogenesis
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