研究課題/領域番号 |
18K15267
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小野 宏晃 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (60466901)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵癌 / 抗がん剤 / リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤 / 合成致死 |
研究実績の概要 |
悪性度が高く予後不良な膵臓癌の治療戦略として、抗がん剤による化学療法で腫瘍を縮小させるだけでなく、微小病変を制御し有効的な根治的外科的切除へと導く集学的治療が有用であると考えられ、新規抗がん剤の開発が重要である。現在の膵癌治療のキードラッグであるゲムシタビンが細胞死を誘導する詳細な分子生物学的メカニズムに関してはいまだ明らかとなっておらず、ゲムシタビンのDNAダメージを増強させるメカニズムの解明と新規治療薬への応用を目標としている。膵臓癌におけるゲムシタビンの腫瘍感受性を増強させ、ゲムシタビンを基軸とした多剤抗がん剤による有効的な治療戦略を樹立する。 本研究ではリボヌクレオチドレダクターゼに関連したRRM1遺伝子に着目し、RRM1機能抑制の膵臓癌における新規治療薬としての有用性の立証を目標とした。膵臓癌におけるRRM1遺伝子の生物学的意義の解明や、基礎解析によるRRM1遺伝子を細胞増殖能やアポトーシスなど細胞死などの詳細な解析に加え、さらには細胞死に至る詳細なメカニズムの解明する。最終的にはRRM1遺伝子を機能的に抑制するリボヌクレオチドリダクターゼ阻害剤を用いたin vivo、in vitro解析を行い臨床応用への検証を行う。 ゲムシタビン+リボヌクレオチドリダクターゼ阻害剤併用による治療はゲムシタビン感受性を増強し治療効果が向上するだけではなく、副作用を軽減する可能性がある。最終的にはゲムシタビン+リボヌクレオチドリダクターゼ阻害剤の新規膵臓癌抗がん剤レジメンとしての臨床的な有用性の立証が本研究の目標である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵臓癌手術症例約120症例におけるRRM1遺伝子を免疫組織染色によりRRM1遺伝子発現解析はすでに施行し、RRM1発現陽性膵癌では生存予後が有意に低下することを見出した。基礎解析では膵臓癌細胞株を用いてRRM1遺伝子抑制により細胞増殖が抑制され、さらには細胞死が誘導されることをすでに明らかにしており、そのメカニズムとして細胞内のATPが減少し、細胞周期としてS周期における細胞周期停止をきたすことを明らかにした。またRRM1遺伝子抑制によるヒストンアセチル化低下が認められている。さらにはゲムシタビン投与下の膵臓癌細胞ではゲムシタビンに対し感受性を示さず耐性示す膵臓癌の細胞質のみRRM1の発現が上昇することを明らかにした。RRM1安定発現株を樹立し、RRM1発現上昇により細胞増殖能が上昇、また遊走能が亢進することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
実験は順調に進展しており、各種実験を遂行する。具体的には、RRM1遺伝子が発現上昇した安定発現株を用いてマウス実験を行い、細胞増殖能への影響をin vivo解析にて評価する。リボヌクレオチドレダクターゼを抑制するハイドロキシウレア(HU)を用いて膵臓癌への細胞増殖能やアポトーシスなど細胞死などへの影響を解析し、細胞死に至る詳細なメカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験にかかる各種実験試薬代として使用する。
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