研究課題/領域番号 |
18K15269
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小林 忠弘 金沢大学, 附属病院, 助教 (20746383)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / 制御性B細胞 / 腫瘍免疫 / B細胞 / IL-10 |
研究実績の概要 |
腫瘍に浸潤したリンパ球のサブセットをフローサイトメトリーにて解析した。B細胞特異的PTEN欠損マウスではB細胞の絶対数がコントロールマウスに比べて増加していた。T細胞、制御性T細胞、NK細胞の絶対数に関してはB細胞特異的PTEN欠損マウスとコントロールマウスの間に有意差はなかった。このことからB細胞特異的PTEN欠損マウスでB16F10メラノーマが増悪する要因として、腫瘍に浸潤するB細胞集団が重要ではないかと考えた。そこで、腫瘍に浸潤するB細胞集団についてフローサイトメトリーでさらに詳しく解析した。その結果、B細胞特異的PTEN欠損マウスおよびコントロールマウスいずれにおいても末梢血におけるB細胞は主にfollicular B細胞で構成されるのに対し、腫瘍に浸潤するB細胞は主にB1a B細胞で構成されていた。また、B細胞特異的PTEN欠損マウスではコントロールマウスと比べて制御性B細胞の絶対数が有意に増加していた。この制御性B細胞の90%以上は、B細胞特異的PTEN欠損マウスおよびコントロールマウスいずれにおいてもB1a B細胞であった。 つぎに磁気分離装置を用いてB細胞特異的PTEN欠損マウスの脾臓からB1a B細胞および非B1a B細胞を抽出し、それぞれを野生型マウスに移入したうえでB16F10メラノーマの増生を観察した。その結果、B1a B細胞を移入したマウスでは、非B1a B細胞を移入したマウスおよび何も移入しなかったマウスと比べて腫瘍が有意に増大した。なお、抽出した各B細胞群をフローサイトメトリーで解析したところ、B1a B細胞群は30%以上の制御性B細胞を含有しているのに対し、非B1a B細胞群は制御性B細胞を2%未満しか含有していなかった。 以上の実験結果より、B1a B細胞はB16F10メラノーマに対する腫瘍免疫反応を抑制している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性黒色腫に浸潤するリンパ球の詳細なサブセット解析を遂行することができた。さらにB1a B細胞および非B1a B細胞の移入実験も遂行することができた。これらの実験結果から、制御性(B1a)B細胞は悪性黒色腫に対する腫瘍免疫反応を抑制するという知見を得ることができた。以上より、計画の達成度はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果より、制御性(B1a)B細胞は悪性黒色腫に対する腫瘍免疫反応を抑制するという知見を得ることができた。これを踏まえて、令和2年度では制御性(B1a)B細胞がどのようなメカニズムで腫瘍免疫反応を抑制するのか解析する予定である。具体的には、野生型マウスもしくはIL-10欠損マウスのB1a B細胞を悪性黒色腫細胞とともに野生型マウスに移入し、それぞれの腫瘍増生がどのようになるか比較する。さらに、B細胞特異的PTEN欠損マウスおよびコントロールマウスにおいて腫瘍に浸潤したリンパ球におけるサイトカイン産生能にどのような差異があるのかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度は悪性黒色腫に浸潤するリンパ球のサブセット解析を重点的に行ったため、腫瘍組織におけるケモカイン産生の評価は行わなかった。この結果、ケモカイン測定のための試薬を購入しなかったために次年度使用額が生じた。 使用計画として、IL-10欠損マウスの飼育費、B1a B細胞の移入実験の際に使用する磁器細胞分離装置のための試薬に充てる予定である。
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