研究課題
B細胞性腫瘍の表面抗原であるCD19と、T細胞の表面抗原であるCD3の両方を標的とする二重特異性抗体であるBlinatumomabは、新規癌免疫療法として近年注目されているが、全ての症例に有効なわけではありません。本研究では、申請者がこれまで研究の中心としてきた必須アミノ酸トリプトファンの代謝酵素であるインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)と、新規癌免疫療法との関係性を明らかにし、Blinatumomab療法の効果予測バイオマーカーやIDO阻害剤併用療法の臨床応用の基盤となることを目指しています。本年度までに、①トリプトファン欠乏およびキヌレニン過剰状態が、Blinatumomabが結合したT細胞に与える影響の解析、②IDO陽性腫瘍に対するBlinatumomabの抗腫瘍効果の検討を行いました。免疫不全マウスを用いて、IDO陽性腫瘍に対するBlinatumomabの効果を調べた結果、IDO陰性腫瘍に対してより治療効果が小さいことがわかりました。また、トリプトファン欠乏が骨格筋萎縮を引き起こし、癌関連のサルコペニアの一因であることを明らかにし、下記の論文報告を行いました。IDO陽性腫瘍により引き起こされるトリプトファン欠乏が予後不良因子であることの新規メカニズムと考えられます。Low Levels of Serum Tryptophan Underlie Skeletal Muscle Atrophy.Nutrients 2020, 12(4),978.
2: おおむね順調に進展している
本年度は当初の計画通りマウスを用いた実験を進めることができた。また、トリプトファンに関連する論文を発表した。
今後は、IDO阻害剤を用いてBlinatumomab療法の治療効果を増強できるかどうかを、マウスを用いて検討し、結果をまとめ論文報告する。
来年度は最終年度となり、更なる詳細な実験を計画しており、令和元年度以上に費用が必要となると考えられ、次年度への繰り越しが生じた。 また成果発表のための学会参加費、旅費などを検討している。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Nutrients
巻: 12 ページ: E978
10.3390/nu12040978