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2018 年度 実施状況報告書

中鎖脂肪酸誘導体による慢性骨髄性白血病の耐性克服機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K15273
研究機関岐阜大学

研究代表者

篠原 悠  岐阜大学, 大学院連合創薬医療情報研究科, 研究員 (10787047)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード慢性骨髄性白血病 / 中鎖脂肪酸 / 耐性 / オートファジー
研究実績の概要

中鎖脂肪酸誘導体の抗がん作用に関して、標的分子の同定を中心に研究を行った。中鎖脂肪酸誘導体を固定化したビーズを用いてプルダウンアッセイを行い、結合タンパク質の質量分析を行うことで標的分子として20個の候補タンパク質を得ることができた。これらの候補タンパク質についてウェスタンブロット解析を行い、中鎖脂肪酸誘導体に対してより特異的に結合する分子を2つ同定することができた。また、臨床検体における発現プロファイルを検証した結果、同定した分子は腫瘍組織で高発現していることを確認することができ、中鎖脂肪酸誘導体のがん細胞特異的な増殖抑制効果との関連性が示唆された。
また、慢性骨髄性白血病の原因遺伝子BCR-ABLの翻訳産物がオートファジーによる分解で発現を制御されており、チロシンキナーゼ阻害剤 (TKI) 耐性細胞においてはその分解が起こりにくくなっていることを見出した。オートファジーはBcl-2ファミリータンパク質とBeclin-1タンパク質との結合が解離することで誘導されるが、TKI耐性細胞においてはRasシグナルの関与によりBcl-2とBeclin-1がより強く結合しており、オートファジーが起こりにくくなっていることを明らかにした。
TKI耐性細胞においても中鎖脂肪酸誘導体が増殖抑制効果を示すことを報告した。その作用メカニズムとして、PKM遺伝子により制御されるエネルギー代謝機構が関与していることを明らかにした。また、本研究では初めて白血病モデルマウスにおける中鎖脂肪酸誘導体の効果を検証し、中鎖脂肪酸誘導体投与群ではBCR-ABLの発現が有意に低下することを明らかにした。さらに脾腫の改善が顕著に認められ、その効果は既存の第3世代TKIとほぼ同等であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

中鎖脂肪酸誘導体の標的分子はこれまでまったく明らかになっていなかったが、プルダウンアッセイや質量分析などの手法を用いることで候補となるタンパク質を同定することができた。臨床検体を用いて候補タンパク質の発現プロファイルを解析し、中鎖脂肪酸誘導体のがん細胞特異的な作用と標的分子との関連性を示唆するデータを得ることができた。
また、抗がん剤耐性細胞においてはタンパク質の分解機構が抑制的に制御されており、BCR-ABLタンパク質がより長期にわたって発現していることを見出し、抗がん剤耐性の新たなメカニズムを明らかにすることができた。さらに、中鎖脂肪酸誘導体は耐性細胞に対しても有効であることをマウスモデルにおいて示すことができた。以上のデータを論文報告することができた。

今後の研究の推進方策

本研究で明らかになった中鎖脂肪酸誘導体の標的分子は、がん細胞における機能がほとんど報告されていなかった。そこで、この分子をノックダウンした際に発現が変動する遺伝子をマイクロアレイで解析する。マイクロアレイ解析で得られた情報から、がん細胞の増殖や生存との関連性が高いと考えられるシグナル伝達経路をウェスタンブロット解析やPCRなどの手法を用いて検証する。また、これまでに明らかにしてきた中鎖脂肪酸誘導体添加時の表現系や細胞内シグナル伝達との共通点および相違点を検証する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Potent antiproliferative effect of fatty‐acid derivative AIC‐47 on leukemic mice harboring BCR‐ABL mutation2019

    • 著者名/発表者名
      Shinohara H, Sugito N, Kuranaga Y, Heishima K, Minami Y, Naoe T, Akao Y.
    • 雑誌名

      Cancer Sci.

      巻: 110 ページ: 751-760

    • DOI

      10.1111/cas.13913.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Autophagic degradation determines the fate of T315I-mutated BCR-ABL protein.2019

    • 著者名/発表者名
      Shinohara H, Minami Y, Naoe T, Akao Y.
    • 雑誌名

      Haematologica.

      巻: 未定 ページ: 未定

    • DOI

      10.3324/haematol.2018.194431.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Chronic myeloid leukemia stem cells and molecular target therapies for overcoming resistance and disease persistence.2018

    • 著者名/発表者名
      Inoue A, Kobayashi CI, Shinohara H, Miyamoto K, Yamauchi N, Yuda J, Akao Y, Minami Y.
    • 雑誌名

      Int J Hematol.

      巻: 19 ページ: E3012

    • DOI

      10.1007/s12185-018-2519-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] SRSF3, a Splicer of the PKM Gene, Regulates Cell Growth and Maintenance of Cancer-Specific Energy Metabolism in Colon Cancer Cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Kuranaga Y, Sugito N, Shinohara H, Tsujino T, Taniguchi K, Komura K, Ito Y, Soga T, Akao Y.
    • 雑誌名

      Int J Mol Sci.

      巻: 19 ページ: E3012

    • DOI

      10.3390/ijms19103012.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Organ-Specific MicroRNAs (MIR122, 137, and 206) Contribute to Tissue Characteristics and Carcinogenesis by Regulating Pyruvate Kinase M1/2 (PKM) Expression.2018

    • 著者名/発表者名
      Taniguchi K, Sugito N, Shinohara H, Kuranaga Y, Inomata Y, Komura K, Uchiyama K, Akao Y.
    • 雑誌名

      Int J Mol Sci.

      巻: 19 ページ: E1276

    • DOI

      10.3390/ijms19051276.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Impairment of K-Ras signaling networks and increased efficacy of epidermal growth factor receptor inhibitors by a novel synthetic miR-143.2018

    • 著者名/発表者名
      Akao Y, Kumazaki M, Shinohara H, Sugito N, Kuranaga Y, Tsujino T, Yoshikawa Y, Kitade Y.
    • 雑誌名

      Cancer Sci.

      巻: 109 ページ: 1455-1467

    • DOI

      10.1111/cas.13559.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] イマチニブ耐性慢性骨髄性白血病に対する中鎖脂肪酸誘導体AIC-47の抗がん作用2018

    • 著者名/発表者名
      篠原悠、杉戸信彦、倉永祐希、南陽介、直江知樹、赤尾幸博
    • 学会等名
      第77回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] Potent Anti-proliferative Effect of Fatty-acid Derivative AIC-47 on Ph-positive Leukemia2018

    • 著者名/発表者名
      篠原悠、南陽介、直江知樹、赤尾幸博
    • 学会等名
      The 9th JSH International Symposium
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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