本研究において、まずは腎機能低下症例に行ける抗がん薬の薬物動態を明らかにしてきた。 透析患者に対するFOLFOX療法においては、高アンモニア血症の頻度が腎機能正常患者と比較して高く(33%)こと、また同症例においてはFBAL等の5-FUの代謝産物の濃度が高値であることを報告してきた。代謝産物のFBALは腎排泄であることを踏まえて、透析患者に対しては、肝代謝が中心であり減量が必要ないとされていた5-FUについても、減量が望ましいことを明らかにした。また、白金製剤の代表的なものであるオキサリプラチンの透析における除去率を透析タイミング別に検討し、オキサリプラチン投与直後の透析、投与翌日の透析のどちらにおいても変わらないことから、抗がん薬投与直後の透析が不要であることを明らかにした。 上記の薬物動態研究を踏まえて、血液透析中の消化管がん患者に対してFOLFOX療法を行う場合に投与開始量として、オキサリプラチンは85㎎/m2と固定のうえで、5-FUの開始用量として通常の2400㎎/m2の投与量ではなく、2000㎎/m2に減量(レベル-1)のうえ1コース目は開始とし、高アンモニア血症出現の有無について確認のうえ、問題なければ通常量である2400㎎/m2の投与を2コース以降検討する設定で検討を行い、5-FUの推奨開始用量決定した。 現在は決定された推奨開始用量にて治療を開始し、その安全性と有用性を評価する検討を行っており、最終的には「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016」の改定に資するものとなることを目指している。
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