研究課題/領域番号 |
18K15278
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河合 洋平 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (90623364)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | T細胞 / 免疫療法 / iPS細胞 / フィーダーフリー / 他家移植 / 棚卸 |
研究実績の概要 |
本年度は人工多能性幹細胞(iPSC: induced pluripotent stem cell)から細胞傷害性T細胞(CTL: cytotoxic T lymphocyte)への分化と高効率増殖を完全フィーダーフリー条件で実現した。T細胞免疫療法では輸注T細胞を疲弊を誘導することなく大量に調製する事が特に他家移植の系において重要である。我々はリンパ球の系統と増殖能を重視しながらiPSCからT細胞系列への運命決定、T細胞前駆体から成熟CTLへの分化、成熟後のCTLの拡大まで培養系を細分化し、それぞれ個別に全てフィーダーフリー条件で最適化を行った。その結果、成熟過程で本来的な増殖能を亢進させるサイトカインを同定し、さらにいくつかのサイトカインを組み合わせて増殖能を最大限生かせる高効率拡大培養系を樹立した。現在では分化と拡大培養を組み合わせて1ディッシュのiPSCから10^15以上のiPSC由来CTLを完全フィーダーフリー条件で作製できるようになり、市場性の高い既製品T細胞療法が可能なレベルに到達しつつある。また高機能性T細胞の分化増殖に関わる因子をフィーダーの無いシンプルな培養系で検討しており、介入に有効なシグナル経路を既にいくつか見出しつつある。これらの知見はT細胞分化の基礎研究、特に倫理的、技術的制約のあるヒトT細胞研究に大いに資すると考える。フィーダーフリー条件でのヘルパーT細胞の分化は現状では実現できていないが、分化経路の多くを共有するCTL作製条件の知見は今後十分応用可能と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CTL分化のフィーダーフリー化、質の向上は確実に進んでいる。ヘルパーT細胞のフィーダーフリー分化は実現できていないが、フィーダー有では効率が悪いながら分化できており、なおかつ分化過程の多くを共有するCTLのフィーダーフリー分化が実現できているため、ヘルパーT細胞のフィーダーフリー分化は近い将来十分実現可能と考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き培養系の最適化に取り組みながらゲノム編集等のテクノロジーを導入し、レポーター細胞などを樹立して薬物/サイトカインスクリーニングにも取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
超免疫不全マウスを用いたin vivo異種移植実験を翌年度に行う。
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