研究課題
プロスタグランジンE2-EP4受容体に対する拮抗薬AAT-008は放射線増感効果を有することをすでに突き止めているが、その機序解明のため大阪大学放射線治療学講座と連携し、2018年度は以下の実験を施行した。なお実験をすすめるにあたり、名古屋市立大学・大阪大学・AAT-008提供元のベンチャー企業それぞれの担当者間で綿密に連絡をとりながら施行した。大阪大学にてマウス大腸がん細胞株CT26WT継代培養を確立し予備実験を経た後、Balb/Cマウス両下肢にCT26WTを移植し、AAT-008 10mg/kg/dayをDay0-18まで1日2回経口投与・Day3に片側下肢のみ9Gy照射した。Day19に腫瘍摘出しフローサイトメトリーでCD45+細胞(リンパ球)のうちCD8+CD69+の細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T cell; CTL)の割合を測定した。AAT-008あり/なしおよび照射あり/なしで4群、まずは1群あたり6匹で実験開始(実際には人道的エンドポイント等にてdrop outあり腫瘍摘出時は1群あたり4-5匹)したところ、照射単独群ではCTLの割合が平均31%のところAAT-008+照射群では平均43%と増加していた(nが少ないため有意差検定せず)。また、AAT-008+照射群のうち2匹で著名な腫瘍縮小を得られ、その2匹ではCTLの割外が67%と大幅に上昇しており、AAT-008による腫瘍内へのCTLの誘導が示唆された。なおこの実験では非照射側の下肢も経時的に腫瘍径を測定したが、残念ながら非照射側は腫瘍縮小を認めず、アブスコパル効果を観察することはできなかった。これらの成果を第9回国際放射線神経生物学会大会にて報告した。
2: おおむね順調に進展している
nが少ないながらもin vivoでAAT-008+照射による腫瘍細胞内のCTL増加という結果をだせた。これにより本研究課題のひとつの目的であるAAT-008の放射線増感効果の機序解明に一歩近づくことができた。
2018年度の実験はnが少ないため、偶然良い結果となった可能性もある。2019年度は1群あたりのマウス数を増加し再現性があるか確認していく予定である。もし再現性がなかった場合には、樹状細胞や制御性T細胞など他の免疫担当細胞についても検証することを検討している。
2018年は大阪北部地震、また台風21号も大阪を直撃するなど災害にみまわれた。この影響で大阪大学の建屋が損傷したり動物放射線照射装置が一時稼働を停止するなどして実験スケジュールを見直さざるを得なくなったため。しかしその状況下で少数匹ながらも作用機序解明につながる良い結果がえられ、2019年度はマウス数を増加させて再現性を検証していく予定である。
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