AAT-008のもつ放射線増感効果の作用機序をみるための実験として、大阪大学放射線治療学講座と連携し、昨年度フローサイトメトリーを施行した。マウス大腸がんCT26WTを下肢に移植し、Day0でAAT-008投与開始、照射群はDay3で9Gy単回照射し、Day18までAAT-008投与を継続する。Day19時点でAAT-008+9Gy照射群のうち著効例をみてみるとCD8+CD69+T細胞(細胞障害性T細胞)の割合が有意に上昇していた。しかしnが少なかったためこれの再現性をみるために今年度、マウス数を増加させ再度同様の検証実験を施行した。しかし、結果は放射線治療そのものにより細胞障害性T細胞の増加を認めるも、AAT-008を加えることによりさらに増加するというものではなかった。問題点としてこれまでフローサイトメトリーを薬剤投与開始後19日目で固定しており薬剤単独群で腫瘍が大きくなりすぎてネクローシスを起こし内部の免疫学的反応を確認しずらくなっていること、一方では放射線治療+薬剤群で著効するまで待っていると腫瘍が小さくなりすぎてしまい、細胞の絶対数が減少してこれも免疫学的反応をうまくとらえられない一因と考えた。このフローサイトメトリーをいくつか日付をずらして実験することとし、Day7で施行したところ、逆に放射線治療単独群や放射線治療+AAT-008投与群で細胞性T細胞が減少という抗腫瘍免疫としては逆の反応を示していた。なお、このフローサイトメトリーにてCD11c+CD40+樹状細胞の増減も検証したが、有意な変化は認めなかった。
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