本研究では、がん細胞指向性を有する核酸ナノ構造体の創出を目指す。昨年度は、DNAアプタマーのひとつであるguanine-rich ODN(GRO)を末端に修飾したDNAナノ構造体、及び、GROのグアニンをシトシンに置換したcytosine-rich ODN(CRO)を修飾したDNAナノ構造体を作製した。さらに、GROを修飾したDNAナノ構造体がヌクレオリンを発現するがん細胞と効率的に相互作用し、その細胞増殖を抑制したことを見出した。今年度は、DNAナノ構造体へのGROの修飾数が、がん細胞の増殖抑制作用に与える影響について検証した。1、3、6個のGROを修飾したhexapodna(hexapod-like structured nucleic acids)作製し、ヌクレオリンを高発現するヒト乳腺癌由来細胞株MCF-7に対する細胞増殖抑制作用を評価したところ、3個のGRO修飾したhexapodnaで最も高い細胞増殖抑制作用が認められた。6個のGROを修飾したhexapodnaが高い細胞増殖抑制作用を示さなかった要因には、その構造不安定性が考えられた。一方、3、6個のCROを修飾したhexapodnaによるMCF-7細胞の増殖抑制作用は認めらなかった。さらに、ヌクレオリンを低発現するチャイニーズハムスター卵巣由来細胞株CHOに対して、GRO単体及び3個のGRO修飾したhexapodnaによる細胞増殖抑制作用も認めらなかった。これらの結果から、GROを修飾したhexapodnaは、ヌクレオリンを介してがん細胞と効率的に相互作用し、その細胞増殖作用を発揮したと推察した。今後は、GROを修飾したDNAナノ構造体と細胞障害性を有する抗がん剤との併用についても検証する予定である。
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