研究課題/領域番号 |
18K15297
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
高島 大輝 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 研究員 (10785588)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Drug Delivery System / 抗体付加抗がん剤内包ミセル / 腫瘍内分布 / 組織因子 / HER2 / エピルビシン |
研究実績の概要 |
抗tissue factor(TF)抗体、抗human epidermal growth factor receptor 2(HER2)抗体をエピルビシン内包ミセルの外殻にそれぞれ付加した抗体付加ミセル(イムノミセル)を合成し、抗腫瘍効果や特性の差異を評価した。 抗TF抗体付加エピルビシン内包ミセルの腫瘍増殖抑制効果は、エピルビシン内包ミセルと抗TF抗体との併用療法と比較して、有意に優れていた。その一方で、抗HER2抗体付加エピルビシン内包ミセルの腫瘍増殖抑制効果は、抗体とミセルの併用療法と比較して、優れる傾向にはあったが、有意な差は認めなかった。抗体付加抗がん剤内包ミセルとして開発するか、抗がん剤内包ミセルと抗体との併用療法として開発するのか、抗体毎に検討することが重要であると認識するに至った。 また、TF高発現腫瘍細胞株で作製したxenograftモデルにおけるエピルビシン内包ミセルと抗TF抗体付加エピルビシン内包ミセルの腫瘍集積性を評価したところ、両薬剤間で腫瘍におけるエピルビシン濃度に有意な差は認めなかった。その一方で、腫瘍内におけるミセルの分布を評価したところ、抗TF抗体付加エピルビシン内包ミセルは、エピルビシン内包ミセルと比較して、より均一に腫瘍内に分布していた。腫瘍に発現する標的分子とミセル外殻に付加した抗体との相互作用を介して、ミセル製剤の腫瘍内における分布がより均一となる結果、イムノミセルの腫瘍増殖抑制効果は、腫瘍における標的分子の発現に依存して増強されると考えらえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を通じて、抗がん剤内包ミセルの外殻に抗体を付加する意義は、抗体毎によって異なることを明らかとした。つまり、外殻に付加せずミセル製剤と併用することが妥当な抗体と外殻に付加すべき抗体とが存在するため、この特性を加味して、薬剤開発の方針を決定することが重要である。 また、抗体付加抗がん剤内包ミセルの作用機序を解明することを本研究の目的の一つと設定したが、これまでに抗体付加を介してミセル製剤の腫瘍内分布がより均一になる結果、腫瘍における標的分子の発現に依存して、抗体付加抗がん剤内包ミセルの腫瘍増殖抑制効果が増強されることを明らかとした。 薬物動態試験や薬剤の腫瘍内分布の評価を通じて、抗体付加抗がん剤内包ミセルの作用機序の一旦を明らかとすることにも成功しており、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで評価を行ってきたエピルビシンに加え、他の化合物を内包した抗体付加抗がん剤内包ミセルの薬効薬理学的評価も進めていく。これまでは外殻に付加した抗体の特性の差異に着目して研究を行ってきたが、この視点に加え、内包する薬剤の特性の差異にも着目して研究を実施し、新たな知見の集積を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度も薬剤の薬理学的解析のための消耗品等に使用する。
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