研究課題
エピルビシン内包ミセル、抗tissue factor(TF)抗体付加エピルビシン内包ミセル、抗human epidermal growth factor receptor 2(HER2)抗体付加エピルビシン内包ミセルの抗腫瘍活性、薬物動態、毒性を評価した。抗TF抗体付加エピルビシン内包ミセルの腫瘍増殖抑制効果は、エピルビシン内包ミセルと抗TF抗体との併用と比較し、有意に優れていた。一方、抗HER2抗体付加エピルビシン内包ミセルの薬効は、エピルビシン内包ミセルと抗HER抗体との併用と比較してより優れる傾向にはあったが、有意な差異は認めなかった。パイロット分子として抗体をミセル外殻に付加する際は、付加すべき抗体か否かを抗体毎に検討することが重要である。抗体-薬物複合体は、抗体が持つ特異的結合能を介して標的分子を発現する腫瘍への薬剤集積が増強されるが、エピルビシン内包ミセル投与後と抗体付加エピルビシン内包ミセル投与後の腫瘍中のエピルビシン濃度は同等であった。一方、抗体付加エピルビシン内包ミセルは、エピルビシン内包ミセルと比較して、標的分子を発現する腫瘍組織中により均一に分布していた。このことから、外殻に付加した抗体と腫瘍に発現する標的抗原との抗原-抗体反応を介して薬剤の腫瘍内分布がより均一になる結果、抗体付加抗がん剤内包ミセルの薬効は、標的分子の腫瘍における発現に依存して増強されると考えられた。エピルビシン内包ミセルと抗体付加エピルビシン内包ミセルの血中滞留性は同等であり、抗体付加によってミセルの安定性が損なわれるということはなかった。また、両者の肝臓、腎臓、心臓への分布も同等であった。薬剤投与後に血液毒性と肝障害を認めたが、エピルビシン内包ミセルと抗体付加エピルビシン内包ミセルの毒性の程度は同程度で、いずれも一過性であった。
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