研究課題/領域番号 |
18K15299
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
重藤 元 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (60805662)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗癌剤耐性 / 核酸プローブ / 遺伝子変異 / イメージング |
研究実績の概要 |
本研究課題は抗癌剤耐性に関連する遺伝子変異を検出するための新規核酸プローブを開発し、細胞チップ技術と組み合わせることで、抗癌剤耐性細胞を、細胞レベルでかつ定量的に検出するデバイスを開発することを目的としている。 本年度はEpidermal Growth Factor Receptor (EGFR)遺伝子の抗癌剤の感受性・耐性に関わる変異部位を選定、および変異の存在するDNAもしくはRNAを特異的に検出可能な核酸プローブの開発を行った。 本研究では1塩基置換の遺伝子変異を検出する必要があることから、DNAに代わり、より塩基配列の認識特異性に優れる人工核酸であるペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid; PNA)を使用したプローブ開発を行った。まず作製したプローブを用いて標的配列の検出可能性を検討した。変異の存在する標的と反応させた際、標的濃度依存的にシグナルが上昇した。このことから開発したPNAプローブを用いることで、変異の存在する標的配列を特異的に検出可能であると結論した。そこで本年度では計画を前倒し、遺伝子変異を持つ細胞株をモデルとして細胞内の変異mRNAを検出することが可能であるか検討した。開発したPNAプローブを用いてFluorescence in situ Hybridization (FISH) 解析を行った結果、変異を持つ細胞株を染色した際、変異を持たない細胞株と比較して高いシグナルを発することが分かった。これらの結果から、本研究で開発したPNAプローブを用いることで、EGFR 遺伝子に変異を持つ遺伝子変異細胞の検出可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に標的となる変異遺伝子配列を特異的に検出することが可能な人工核酸プローブの開発に成功したこと。 第二に計画を前倒しし、細胞内における変異遺伝子の検出可能性が示唆されたこと。 以上の理由から本研究がおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き初年度に得られた研究成果をさらに発展させ、抗癌剤耐性細胞を高感度に検出する手法の開発を目指す。具体的には(1)細胞株をモデルとし、固定化細胞、生細胞双方において遺伝子変異細胞の特異的検出が可能となる条件を検討する。さらに遺伝子変異を持つ細胞株と持たない細胞株を様々な濃度比で混合し、変異を持つごく少数の細胞を、大多数の変異がない細胞の中から検出できる条件を検討する。(2)診断への応用可能性を検討するために、遺伝子変異細胞株を移植することで作製した組織切片を用い、切片上の変異細胞の有無を解析できる手法の開発を行う。(3)さらに細胞を整列配置し単一細胞レベルでの解析を実現するために、細胞チップの開発、並びに細胞の播種条件を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
標的検出プローブの開発において本年度では様々な種類のプローブを試作し、標的を検出することが可能なプローブを見出す予定であった。しかし、予定よりも早く標的検出能を持つプローブの作製に成功したことから次年度使用額が生じた。今後モデルとして様々な種類の細胞株を用いて遺伝子変異細胞の検出条件を検討する予定である。そこで次年度使用額を利用して研究に用いる細胞株の培養、維持などに用いる予定である。
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