本研究課題は抗癌剤耐性に関連する遺伝子変異を検出するための新規核酸プローブを開発すること、さらに開発したプローブを細胞チップ技術と組み合わせることで、抗癌剤耐性細胞を、単一細胞レベルでかつ定量的に検出するデバイスを開発することを目的としている。前年度まで、標的の変異が存在するRNAを特異的に検出可能なペプチド核酸(PNA)を使用したプローブ開発を行い、細胞チップ技術と組み合わせることで1細胞レベルでの変異細胞の検出に成功した。また、マウス組織切片中に含まれる変異細胞の検出に一部成功した。そこで最終年度である本年は以下の課題を中心に研究を推進した。(1)血中に存在するCTCを本研究で開発したプローブで解析するために、前年度開発した技術を用いてさらなる少数の変異細胞の検出に挑戦した。その結果5%以下の変異細胞を検出することに成功した。これらの成果は論文としてMicromachines誌に掲載された。(2)前年度までに開発したプローブのさらなる検出感度、特異性向上のためにプローブの改良を行った。PNA部位と蛍光色素をつなぐリンカーの長さを検討し改良した結果、検出感度と特異性が数倍~数十倍に向上させることに成功した。(3)(2)で改良したプローブを用いマウス組織切片中における遺伝子変異細胞の検出に挑戦した。前年度までに一部の変異細胞を検出することには成功したが、一部検出が困難な標的も存在した。そこで本年度で改良したプローブを用い解析を行った結果、前年度検出できなかった標的の検出に一部成功した。 本研究により高い検出感度と特異性を持つ遺伝子変異検出プローブの開発に成功し、基礎原理の実証に成功したと結論した。今後、開発した技術を用い癌患者由来の試料を用いて解析を行うことで、新たな診断技術の創出や癌細胞の進化機構の解明に取り組んでいく予定である。
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