ALKのkinase domainとEML4のcoiled-coil domain(cc)を含むN末端が逆位で融合したEML4-ALKは、二量体化により下流シグナルが恒常的活性化する。この過程にはEML4のcc domainが重要である。そこでEML4のcc構造自身を競合的に作用させることによりEML4-ALK蛋白の単量体化を誘導し、癌の生存増殖を抑制できないだろうか。この問いを検証するため、Ba/F3細胞株を用いてALK融合蛋白の量体調節モデルを作成し、単量体化による増殖への影響と下流蛋白発現、及びマウスでの腫瘍形成・増殖能を検証した。結果、単量体化によりALKリン酸化と下流シグナル発現が低下し細胞増殖が抑制されること、マウスでは単量体化群で腫瘍形成が抑制されることがわかった。続いて蛍光モデルを用いて、EML4-ALKととEML4ccの蛋白相互作用を検証した。結果EML4ccを共発現させたEML4-ALK発現細胞群においては、非共発現群に比べ蛍光強度、細胞増殖能が低下し、マウスでの腫瘍増大速度が低下したことから、EML4ccがEML4-ALKの多量体化を抑制することが示唆された。更にEML4-ALK恒常発現細胞株に対しcc模倣ペプチドを投与し細胞活性を検証すると、ペプチド投与群でviabilityが低下することがわかった。またALK-TKIとccペプチドを併用した場合、TKI単独群に比べ高い抗腫瘍効果が得られ、またペプチド投与によりALKリン酸化が低下することがわかった。また細胞膜透過ペプチドとccペプチドの併用により細胞内へのペプチド導入率が向上した。以上の結果から、EML4cc domainを標的としたEML4-ALK融合蛋白の単量体化は、EML4-ALK陽性肺癌に対して新たな治療戦略となる可能性が示唆された。
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