研究課題/領域番号 |
18K15304
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浅田 佳代 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (50805843)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 統合的ゲノム解析 / 卵巣高異型度漿液性癌 / 相同組換修復関連遺伝子変異 / PARP阻害剤 / 免疫チェックポイント阻害剤 |
研究実績の概要 |
本研究では卵巣高異型度漿液性癌を対象に、①これまでに施行した78症例における全エクソンシークエンス、RNAシークエンス、メチル化アレイの解析結果をもとに DNA傷害修復に関わる遺伝子の変異、発現異常を明らかにすること、②BRCA1/2以外にPARP阻害剤の治療標的となる因子を明らかにすること、③DNA修復機構に着目したPARP阻害剤以外の分子標的治療法を開発すること、の3つを研究目的としている。①について、TP53は95%の変異率を示し、42.3%の症例で相同組換修復関連遺伝子変異(HRD :Homologous Recombination Deficiency)を認めた。②③に関連して、ヒストンメチルトランスフェラーゼであるSMYD2の機能分析を施行したところ、SMYD2選択的阻害剤は単独で、またはPARP阻害剤と組み合わせることにより、卵巣高異型度漿液性癌患者の治療に使用できる可能性が示された。 また、がん細胞独自の遺伝子変異に伴って新たに生まれた変異抗原(neoantigen, neoAg)の数とHLA-classIの発現に着目したところ、HR-proficient群の方がHR-deficient群よりも有意にneoAgが少なく、予後不良であった。HR-proficient群の中でも、neoAgの数が多く、HLA-classIの発現量が多い群では予後が良好であった。予後良好な患者ではGene Set Enrichment Analysis(GSEA)にて免疫関連遺伝子が濃縮されていることが示され、腫瘍微小環境への免疫細胞の浸潤と活性化を示しているT-cell-inflamed型を持っていることが判明した。これにより、現在PARP阻害の恩恵を受けていないHR-proficient群において、免疫チェックポイント阻害剤が治療の代替手段となる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では卵巣高異型度漿液性癌を対象に、①これまでに施行した78症例における全エクソンシークエンス、RNAシークエンス、メチル化アレイの解析結果をもとに DNA傷害修復に関わる遺伝子の変異、発現異常を明らかにすること、②BRCA1/2以外にPARP阻害剤の治療標的となる因子を明らかにすること、③DNA修復機構に着目したPARP阻害剤以外の分子標的治療法を開発すること、の3つを研究目的としている。そのうち、前述の通り①②③までを成しえたと考えており、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
DNA修復機構に着目したPARP阻害剤以外の分子標的治療法を開発することを目的としている。PARP阻害剤はDNA二本鎖切断を誘導することを主たる目的とした分子標的薬であるが、他のDNA修復関連分子(ATM, ATR, Chk1, Chk2)を標的とした分子標的薬そのものも新たな選択となりうる。これらの阻害剤とDNA傷害性抗がん剤との併用による殺細胞効果の増強も期待される。そこで、ATM, ATR, Chk1, Chk2の各阻害剤の抗腫瘍効果、DNA傷害性抗がん剤(シスプラチン、アドリアマイシン)との併用療法について検討する。具体的な方法は下記を想定している。 *卵巣漿液性癌細胞株7株(BRCA1変異2株)を用い、ATM, ATR, Chk1, Chk2の各阻害剤を添加し、抗腫瘍効果を評価する。 *シスプラチン、アドリアマイシンと上記阻害剤の併用療法における抗腫瘍効果を評価する。 *抗腫瘍効果と遺伝子変異プロファイルとの関連を調べる。 *in vivoにおける抗腫瘍効果; BALB/cヌードマウス皮下移植モデルを作成し、腫瘍増殖抑制効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
自身(研究代表者)が2019/8/5に子を出産し、産休を取得したため。使用計画は下記。 DNA修復機構に着目したPARP阻害剤以外の分子標的治療法を開発することを目的としている。PARP阻害剤はDNA二本鎖切断を誘導することを主たる目的とした分子標的薬であるが、他のDNA修復関連分子(ATM, ATR, Chk1, Chk2)を標的とした分子標的薬そのものも新たな選択となりうる。これらの阻害剤とDNA傷害性抗がん剤との併用による殺細胞効果の増強も期待される。そこで、ATM, ATR, Chk1, Chk2の各阻害剤の抗腫瘍効果、DNA傷害性抗がん剤(シスプラチン、アドリアマイシン)との併用療法について卵巣漿液性癌細胞株を用いて検討する。具体的な方法は下記を想定している。 *卵巣漿液性癌細胞株7株(BRCA1変異2株)を用い、ATM, ATR, Chk1, Chk2の各阻害剤を添加し、抗腫瘍効果を評価する。*シスプラチン、アドリアマイシンと上記阻害剤の併用療法における抗腫瘍効果を評価する。*抗腫瘍効果と遺伝子変異プロファイルとの関連を調べる。*in vivoにおける抗腫瘍効果; BALB/cヌードマウス皮下移植モデルを作成し、腫瘍増殖抑制効果を検証する。
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