がん治療を困難にする悪性形質の中でも、転移や薬剤耐性の形質発現は、がん細胞周囲の環境(がん微小環境)が重要であることが知られている。そのため、悪性形質をもたらす微小環境を早期に検出し、腫瘍特性を理解したうえで治療法を選択することは、難治性固形がん治療における理想といえる。肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor: HGF)とその受容体METは、転移・薬剤耐性両者に深く関連する、代表的ながん微小環境形成因子である。 本課題では、HGFおよびMETに対し、高い選択親和性を有する特殊環状ペプチドをPETプローブとして応用し、イメージング画像と腫瘍特性を強く関連付けた診断技術を確立することを目的とする。 本年度は、(1)薬剤耐性腫瘍の選択的検出、(2)がん微小転移巣の描出、そして(3)転移前ニッチのメージングに着手した。 (1)では、分子標的治療薬Gefitinibに感受性のある肺がん細胞株と、同細胞にHGFを強制発現させた細胞を、それぞれ薬剤感受性モデル、耐性獲得モデルとしてマウスへ担がんし、HGF結合性ペプチドを使用してPETイメージングを行った。その結果、薬剤耐性腫瘍へのプローブの選択的集積が認められ、可視化することに成功した。 (2)、(3)に関しては、次年度以降に行う実験系の立ち上げとして、免疫組織化学による評価系の妥当性の検証と蛍光プローブによる動物実験の予備検討を行った。
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