デスモイド型線維腫症で特徴的なCTNNB1遺伝子の主要な変異型であるT41A変異型、S45F変異型および変異型のない腫瘍よりそれぞれ腫瘍細胞を分離し細胞培養を行った。保存治療や手術治療において臨床的経過が不良であることが報告されているS45F変異型細胞では、他の遺伝子変異型細胞と比較しβ-cateninの核内移行を強く認め、また臨床的に用いられているメロキシカムやドラッグスクリーニングによる増殖阻害効果の評価より治療薬の候補薬として選択した薬剤による抑制効果が低いことが示された。またWnt/βカテニンシグナルの下流遺伝子の発現評価においても、他の遺伝子変異型細胞と異なった発現プロファイルを呈しており、S45F変異型腫瘍ではWnt/βカテニンシグナル系のより強い亢進により、高い薬剤抵抗性や再発率など特異的な臨床経過に関与している可能性が示唆された。In vivoモデルによる薬剤感受性の評価等を目的とし培養細胞を移植することでPDXモデルの作成を試みたが、腫瘍として生着せず成功しなかった。次に臨床像について解析を行った。国内での多施設研究において、S45F変異型腫瘍は外科的切除後の有意な局所再発因子であることが示された。一方でMTX/VBL化学療法においてはS45F変異は有意な治療効果予測因子ではなく、治療抵抗性であるS45F変異腫瘍に対しても一定の治療効果が期待できることが示唆された。
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