研究課題
本研究課題は、乳がんに対して、放射線とdopamine receptor標的薬の作用機構が異なる治療を行い、治療耐性を克服し従来の治療法に比べ有意に抗腫瘍効果ならびに転移・骨吸収抑制効果がみられるか否かを問うことを目的としている。昨年度に、炭素イオン線とdopamine receptor標的薬の併用が、腫瘍細胞の増殖遅延ならびにがん転移能の一因である、細胞遊走能(細胞が移動する能力)、細胞浸潤能(細胞が基底膜を分解する能力)を抑制することを報告した。本年度は、2種類の動物モデルを用いて、抗腫瘍効果ならびに骨転移抑制効果を検討した。細胞はマウス乳腺細胞株4T1を用いた。放射線には、X線と炭素イオン線を用いた。細胞実験同様、最も抗腫瘍効果・骨転移抑制効果を示した群は、炭素イオン線とdopamine receptor標的薬の併用であった。しかし、X線とdopamine receptor標的薬の併用によっても、X線単独治療群に比べ、有意に抗腫瘍効果・骨転移抑制効果を示した。dopamine receptor標的薬の効果に対して、分子メカニズムを解析すると、がんの代謝や骨代謝に関わるWntの共受容体であるLow-density lipoprotein receptor-related protein 5 (LRP 5)がdopamine receptor標的薬によって発現低下を起こし、その結果がんの増殖や転移に関わるRunt-related transcription factor 2 (RUNX2)、Matrix metallopeptidases9 (MMP9)、Src、Snailといったタンパク発現が抑制されることを見出した。よって、乳がんの骨転移に対する治療アプローチとして、dopamine receptorの制御が新たな治療戦略として有用である可能性を示した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
FASEB journal
巻: 33(12) ページ: 13710-13721
10.1096/fj.201901388R