標準的な乳癌検診に使用されるX線マンモグラフィ検査の欠点を克服すべく、通信用微弱電波を用いた非侵襲的な新規乳癌検診画像システムの開発を進めるべく検討を行った。乳房ファントムおよび乳房切除標本を使用した非臨床データを基に開発した乳房画像検査装置を用いて特定臨床研究(jRCTs062180005)を実施した。期間内に乳癌症例の予定登録数100例を登録し、全例で測定を実施した。全症例において有害事象はみられなかった。 データ処理にあたって皮膚および装置と体表による間隙によるアーチファクトが確認されたため、皮膚アーチファクト除去プログラムを作成した。反射波の有効域の抽出とtwo-stage rotational surface clutter法により、皮膚アーチファクトの軽減に成功した。背景組織比誘電率を考慮し、透過共焦点画像を作成し、乳房内の病変を画像化した。乳癌存在診断の陽性/陰性判定は、乳房内誘電率分布の最大輝度とそのばらつきに基づいて行った。暫定的な乳癌診断精度は、感度88%、特異度50%であり、良好な感度を確認できたが、偽陽性の課題が残った。 今後の臨床応用に向けては、偽陽性の解決が重要である。さらなるアーチファクト除去プログラムにより偽陽性の減少を図るとともに、乳癌の臨床病理学的特徴と診断精度の関連を調査し、本研究装置原理の最適使用法を検討する。また、トモグラフィ処理および複素誘電率再構成法を融合して、データ処理の高速化・高精度化についてさらなる解析を進め、装置の改良を図る予定である。
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