研究実績の概要 |
トリプルネガティブ(TN)乳癌において術前化学療法施行前後の血清エクソソーム中のmiRNA発現と治療効果及び予後との相関を検討した。術前化学療法により腫瘍の完全消失が得られた症例(pCR)と腫瘍の遺残を認めた症例(non-pCR)においてマイクロアレイ解析を行った結果、16miRNAにおいて発現パターンの相違を認めた。このうち4遺伝子(miR-4448, miR-2392, miR-2467-3p, miR-4800-3p)を用いてpCR予測におけるAUCを算出した結果、AUC 0.6752の中等度の精度であった。さらに、non-pCR症例の中でも再発を来した症例と、無再発例において同様にマイクロアレイ解析で比較検討を行った結果、43miRNAにおいて有意な発現パターンの相違を認めた。そのうちmiR-195-5pが再発症例において最も高発現しており、miR-548abが最も低発現していた。公共のデータべースである Diana Tools mirPath v.3 analysisを用いてネットワーク解析を行ったところ、“pathway in cancer”, “focal adhesion”,“cell cycle”, and“MAPK signaling pathway”などが、non-pCRで再発を来した症例において重要な経路として同定された。 以上の結果から、①いくつかのエクソソームmiRNAの組み合わせにより、悪性度の高いTN乳癌において治療効果が得られる症例と、そうでない症例の選別が可能である、②特定のエクソソームmiRNA発現パターンにより、標準治療により治療効果が得らず(non-pCR)、かつ再発を来した症例の予測が可能である。この治療抵抗性に関する遺伝子のパスウエイ解析や生物学的機序の解明を行うことで、既存の化学療法以外の新規薬剤の考案につながる。
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