研究課題
食道癌、胃癌、大腸癌を含む消化管癌の日常臨床におけるCirculating tumor DNA (ctDNA)の有用性について評価した。遺伝子パネルによる原発巣変異スクリーニングにより検出された症例特異的変異に対し、変異検出用のProbe/Primerをそれぞれデザインし、digital PCRを用いて経時的血漿サンプルのctDNA解析を施行した。原発巣遺伝子パネル解析では、食道癌では独自デザインの31遺伝子のSCC panel、胃癌・大腸癌では151遺伝子を標的とした市販のPan-cancer panelを使用したが、変異同定効率は食道癌で高く、組織特異的パネルの有用性が示された。治療前採血におけるctDNA陽性率は食道癌、大腸癌で約80%、胃癌で約40%であった。胃癌におけるctDNA低陽性率に関しては、使用したパネルに日本人胃癌で変異頻度の高い遺伝子が搭載されていなかったこと、非腫瘍性の間質の増生に富むスキルス胃癌では実際の腫瘍細胞量が少なく血中にctDNAが放出されにくいことが考えられた。食道癌のctDNAモニタリングでは、再発や腫瘍増大の早期検出、正確な治療効果判定、無再発状態の確認において既存の検査より臨床的有用性を有する可能性が示唆された。大腸癌、胃癌ではさらに原発巣の3か所から組織採取を行い解析した。3か所で共通する変異は非共通変異に比べ、変異アリル頻度 (variant allele frequency)が高く、ctDNA陽性率も高かった。癌患者の組織サンプルからの遺伝子変異解析では腫瘍内の非均一性heterogeneityがしばしば問題となるが、最も高いVAFを示す変異を用いることでctDNAモニタリングによる腫瘍量変動の評価が可能であることが示唆された。本研究のctDNAモニタリングシステムは進行消化管癌患者の日常臨床に有用であると考えられた。
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