C57BL/6Jマウスに同じ系統のB16メラノーマ細胞を移植した実験においては、病理組織像から腫瘍内への炎症細胞浸潤のみならず、真皮への細胞浸潤とその表皮内への浸潤を観察している。その主要炎症細胞はリンパ球・好中球・好酸球であると考えられるが、我々は過去の研究により、ドーパミンD1様受容体アンタゴニストならびにD2様受容体アゴニストがTh17細胞の分化、活性化を抑制することにより好中球性炎症を抑制することを明らかにしている。この事を鑑みて薬剤Xを用いた実験を行った。 C57BL/6マウスに同じ系統のB16メラノーマ細胞を移植し、その移植局所に陰性対象(ワセリン)群と薬剤X(ワセリン+薬剤X)群を作製し、毎日同量のそれぞれの薬剤(クリーム)を塗布し続けた。すると、14日目の時点で長径がワセリン群に比較して薬剤X群では優位に腫瘍抑制効果が確認された。また、病理組織像を確認してもワセリン群には腫瘍に特徴的である血管の増殖(腫瘍血管新生)や腫瘍内および腫瘍の周囲への細胞集積が確認出来たのに対し、薬剤X群においてはその特徴は見られなかった。
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