研究課題
高分化型脂肪肉腫6検体、脱分化型10検体、正常脂肪組織6検体を用いて、Infinium HumanMethylationEPIC BeadChipによる網羅的なDNAメチル化解析を行った。全CpGプローブを用いた主成分分析 (PCA)から、3群はそれぞれグループを成し、正常脂肪組織は近接して分布し類似性が高いのに対し、脱分化型脂肪肉腫は広範に分布し腫瘍間不均質性が高い事が分かった。PC1・PC2への寄与率が高く、脱分化型脂肪肉腫で高メチル化の193プローブは脂肪分化に重要なPPARγの結合領域を多く含んでいた (6.2%: 全ゲノム中1.1%)。高メチル化の193プローブのうち、前駆脂肪細胞または成熟脂肪細胞でプロモータにH3K27acを有する5遺伝子に関してRT-qPCRを行った。その結果、脂肪分化や合成に関連する遺伝子(STAT5A, METTL7A)が、脱分化型脂肪肉腫で低発現であり、脱メチル化剤投与により発現回復した。3群比較傾向検定によっても、脱分化型脂肪肉腫で有意な高メチル化領域としてSTAT5Aが同定され、また、脂肪細胞におけるスーパーエンハンサー領域が、全ゲノムと比較して濃縮された (16.2%: 全ゲノム中7.6%)。これらの事から、脱分化型脂肪肉腫の発生にはDNAメチル化による脂肪分化関連遺伝子の発現抑制と、脂肪分化に重要な領域のエピゲノム異常が関与している事が示された。
1: 当初の計画以上に進展している
研究は計画通りに順調に進んでおり、さらに研究結果から、大変興味深い事に、脱分化型脂肪肉腫のがん化にはDNAメチル化異常が大きく寄与している可能性が強く示唆された。
今後はメチル化異常を来した遺伝子群の機能解析を進め、更にメチル化解除による抗腫瘍効果について検討して、DNAメチル化剤の本腫瘍に対する治療効果について検討し、臨床応用を目指す。
前年度メチル化アレイを施行した腫瘍検体数が当初の計画より少なかった。これは一度に大量の検体を解析せず、まずは検体数を抑えて、メチル化の傾向を見る計画へ変更したためである。前年度の解析から有意義な結果を得たため、本年度以降では、追加検体のメチル化解析及び、細胞株やXenograftを用いた、メチル化遺伝子解析及び脱メチル化剤の抗腫瘍効果の確認を進める予定である。
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