研究実績の概要 |
脱分化型脂肪肉腫のメチル化異常の全体像を把握するため、まず、手術により得られた患者由来の凍結保存組織(脱分化型脂肪肉腫10検体、高分化型脂肪肉腫6検体、正常脂肪組織6検体)を用いて、Infinium HumanMethylationEPIC BeadChipによる網羅的なDNAメチル化解析を行った。脱分化型脂肪肉腫(高悪性度)、高分化型脂肪肉腫(良悪性中間)、正常脂肪組織の3群はそれぞれグループを成し、正常脂肪組織および高分化型脂肪肉腫は近接して分布し比較的類似性が高いのに対し、脱分化型脂肪肉腫は広範に分布し腫瘍間不均質性が高い事が分かった。また、脱分化型脂肪肉腫の腫瘍組織においてエンハンサーおよびプロモーター領域でメチル化されている遺伝子は脂肪分化に重要な遺伝子であるPPARγの結合領域を多く含んでいることが分かった (6.2%: 全ゲノム中1.1%)。 次に、脱分化型脂肪肉腫の細胞株(LP6)を用いてAgilent SurePrint G3 Human Gene Expression 8x60K v2による遺伝子の網羅的な発現解析を行い、高メチル化状態にある脂肪分化や合成に関連する遺伝子(PPARγ2, METTL7Aなど)の発現は、脱分化型脂肪肉腫の腫瘍組織において低く、それらが実際に脱メチル化剤の投与により発現回復が可能であることを見出した。 これらの事から、脱分化型脂肪肉腫の発生にはDNAメチル化による脂肪分化関連遺伝子の発現抑制と、脂肪分化に重要な領域のエピゲノム異常が関与している 事が示された。 最後に、高メチル化により発現が低下している遺伝子(PPARγ2, METTL7Aなど)の脂肪肉腫発生に関わる機能を明らかにするために、過剰発現・ノックダウン・ノックアウト実験を行ったが安定した過剰発現・ノックダウン系の作成に難渋している。
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