研究実績の概要 |
現在、stage II/III胃癌に対してはS-1単独療法が本邦における標準治療である。MAGIC trialの付随研究の結果は、S-1単剤による術後補助化学療法によってむしろ生存期間が短縮する症例が一定数存在する可能性を示唆している。本研究によって、MSI/dMMRとS-1単剤による術後補助化学療法の効果との関連が明らかとなれば、現在、米国のstage II 大腸癌に対して行われているのと同じ戦略、つまりMSI-Hであれば術後補助化学療法を行わないといった方針を選ぶことが可能になる。 S-1にて術後補助化学療法を受けたstageII胃癌検体209例を集め解析を行った。登録された209人の患者のうち、185サンプル(88.5%)でMSIステータスが評価可能であり、24サンプル(13%)でMSI-Hが確認された。マイクロサテライト安定型(MSS)と比較して、MSI-HはステージIIbおよび全身状態の悪さとの関連性が高く、特に年齢の高さと血清アルブミンの低さが顕著であった。無再発生存期間(RFS)[HR, 1.00; p = 0.997]および全生存期間(OS)[HR, 0.66; p = 0.488]において、MSI-HとMSSの間には有意な差はなかったが、MSI-H GCは、傾向スコアで患者の背景を調整した後、MSSよりもRFS[HR, 0.34; p = 0.064]およびOS[HR, 0.22; p = 0.057]が大幅に改善した。文献検索では、MSI-HステージIIのGCで手術のみを受けた場合の生存率は、我々の研究ではS-1アジュバント化学療法を受けた場合と同程度であり、このサブセットに対するこのような治療の有効性は限られていることが示唆された。以上の結果を日本臨床腫瘍学会総会ならびに胃癌学会総会で報告した。現在論文作成中であり近日中に投稿する。
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