研究課題/領域番号 |
18K15333
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
吉田 潤次郎 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (20712706)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | GAPDH / ケミカルバイオロジー / がん間質相互作用 / 新規抗がん剤 / スクリーニング |
研究実績の概要 |
細胞外GAPDHについて、抗がん活性を有するがんー間質相互作用の機能分子として位置付け、化合物によってこれを誘導することを目的とした。また、GAPDHの分泌機構を解析することで、がん細胞の増殖を抑制するような新しい細胞間相互作用の機構を明らかにすることも目的としている。前年度までに、GFP融合GAPDH発現HEK293(HEK293/GAPDH-GFP)細胞を用いて、先端モデル支援プラットフォームで配布されている標準阻害剤キットおよび微生物培養液をソースとしたスクリーニングを行なった。この結果、準阻害剤キットからはDeoxynojirimycin(DNJ)、微生物培養液については1サンプルで濃度依存的にHEK293/GAPDH-GFPの培養上清のGFP蛍光値を増加させることが分かった。当該年度では、微生物培養液からのスクリーニングをさらに実施した。この結果、前年度ヒットしたサンプルの他に新たに4サンプルについて、GFP蛍光値を増加させる活性を見出した。これまでに得た微生物培養液のヒットサンプル5つのうち、最も強くGFP蛍光値を増加させる培養液1つについて溶媒抽出による粗精製を行い、活性を検討したところ、目的の活性はブタノールによって抽出できることがわかった。さらに、この培養液は1-deoxygalactonojirimycin (DGJ) を生産する放線菌であることがわかった。DGJは準阻害剤キットから見出したDNJの類縁物質であるため、DNJの標的であるゴルジ輸送に関わるglucosidase I, IIとGAPDHの分泌機構の関連が強く示唆された。DGJの精製品をHEK293/GAPDH-GFPに処理したところ、DNJと同様に培養上清のGFP蛍光値を増加させることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
度重なる緊急事態宣言のため、ヒットとした培養液の大量調整などに時間がかかった。また、DNJおよびDGJは高濃度でHEK293/GAPDH-GFPに処理しても、GAPDHの分泌促進作用はコントロールと比較して2倍弱程度にとどまるため、本研究課題の目的化合物としては活性の強さに疑問が残る。ヒット培養液に他の目的物質が含まれる可能性も考え、次年度では精製を行う予定である。しかし、全く異なるスクリーニングソースからヒットした化合物が類縁物質であったことは非常に興味深く、また、DNJ、DGJ共に細胞外へのタンパクの分泌への関与は知られていないためGAPDHの分泌機構の解析の面では前進した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒット培養液について、ブタノール抽出層からの精製をすすめる。また、DGJが主な活性成分か、もしくは他の活性成分かを検討する。DGJについては目的の活性は有するものの、その活性は弱いためDGJが主な活性成分であった場合は精製を中止する。これに並行して、化合物ライブラリーをソースとしたスクリーニングを実施する。 GAPDHの分泌機構については、DNJの標的であるゴルジ輸送に関わるglucosidase I, IIが重要であることが示唆されたため、HEK293/GAPDH-GFPにおいて遺伝子ノックダウン等を行い、GAPDHの分泌機への関与を検討する。
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