研究実績の概要 |
これまでの報告のとおり申請時の課題は2年間で論文化まで達成している。4年目は3年目に引き続き、魚雷型カプセルの改良について研究を行った。具体的には、①魚雷型カプセルの調製効率の向上、および②魚雷形状の直径制御である。 ①魚雷型カプセルの調製効率は40-80%程度であったため、平行して調製効率の改善を行った。従来SL12、SL16の組み合わせで魚雷型カプセルを調製していたが、SL16単一系集合体の形成が、SL12とSL16複合体による魚雷型カプセルの調製効率が低下させていた。そこで、臨界ミセル化濃度が高く単一系集合体を形成しづらいiSL12を合成し、SL12と組み合わせて魚雷型カプセルの調製を行ったところ、SL12:iSL12 = 2:1のとき95%以上の収率での魚雷型カプセル調製に成功した。3年目に引き続き本研究を行い論文としてまとめるに至った。 ②これまでの研究から、魚雷型カプセルのアスペクト比が細胞内取込および組織集積のような体内動態に影響を及ぼすことが明らかとなっていた。これまでの魚雷型カプセルは直径が80 nmのものに限られていた。そこで2つの手法にてチューブ部の直径制御を検討し、成功した。一つは、両親媒性ポリペプチドの疎水部のアミノ酸配列がペプチド膜の曲率を決定していることがわかったため、疎水鎖長を長くすることで物理的に曲率低下を目指した。長い疎水部を有する両親媒性ポリペプチドを合成し、120 nm径のナノチューブの作成に成功した。もう一つは、アルコールをペプチド膜に差し込むことで、分子配向を乱し、ペプチド膜の曲率を低下させることで、チューブの直径制御に成功した。メタノール、エタノール、プロパノールを用いることで分子サイズに応じてそれぞれ、90, 100, 110 nm径のチューブが得られることを明らかにした。いずれも、論文としてまとめている。
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